腰椎分離症|2週間以上続く腰痛

腰椎分離症

前回,小学校高学年で発症した腰椎分離症はコルセットの着用と運動禁止で骨癒合率90%と記しました.
いわゆる治癒とみなされる状態になるので,小学生や中学生でごく初期の分離症と診断できる場合は強くこの治療(安静療法)を勧めています.
しかし,中高生になると骨癒合率は徐々に低下し,進行期になると60%,終末期では骨癒合率はほぼ0%とレントゲン上の治癒は望めなくなってきます.
他部位の骨折や疲労骨折は100%の骨癒合が目標なので,ギプス固定や手術など方法は違いますが,治療法は確立しており,患者さんには骨がつかない可能性や手術の危険性を説明することがインフォームドコンセントですが,腰椎分離症の場合は違います.
患者さんとその家族には治療方針について,運動禁止とコルセットの常時着用4-6か月で骨癒合が見込める可能性が何パーセントあるかを説明して治療法を選択してもらいます.
たとえば中学2年生の腰椎分離症(進行期)でこのぐらいレントゲンではっきりしていると完全に骨がつく可能性は60%ですが,運動禁止してコルセット作りましょうか?
と聞くと,ほとんどの患者さんは迷います.6月ですとほとんどのスポーツ種目で夏の大会に向けた予選が始まるころで,よほど痛がっていなければスポーツ継続を希望します.これがシーズンオフになると治療を希望するケースが増えてきます.
大事な中学3年間のうちの半年を治療に費やすのですから骨癒合率90%であれば強く勧められるのですが,60%ですから,これは仕方のないことかもしれません.このような悲劇を防ぐためには超早期に分離症を診断して骨癒合率90%のうちに治療を始め,やはり完全治癒をめざしたいと思っています.
分離症をおこすかどうかは問診,触診でわかります.医師の経験によるところも大きいと思いますが,これは分離症になりそうだというケースでは1-2週間の運動禁止だけでなおる場合も少なくないと思います(放置していれば分離症になっているかどうかはわかりませんが,)
2週間以上続く腰痛があれば,スポーツ整形外科を早めに受診していただければと思います.早期にMRIで診断できれば安静期間も短くてすむはずです.

腰椎分離症|成長期の子供の腰痛

腰椎分離症

成長期の子供の腰痛で,代表的な腰椎分離症の発生率は5%と,比較的多く,1クラスに2,3人はいる計算になります.
特に,激しいスポーツを行う中学生によくみられ,野球やテニス,バレーボールなどでは利き腕の反対側の腰椎分離症がおおく,原因は主に捻りの動作による疲労骨折と考えられています.一夫バスケットボールやサッカーでは特に左右差はなく,その活動量と体幹の柔軟性も関係しています.
私が医学生として整形外科を学んだ30年前は先天性と教えられており,痛みのない範囲でスポーツ活動を許可するように指導していました.今考えると,終末期の何mmも離れてしまった分離部を見て,先天性という説に落ち着いていたのだと思います.
大学の医局を出るころには,腰椎分離症は疲労骨折というコンセンサスが出来上がっており,その進行度に応じて,分離症初期では分離部の骨癒合,いわゆる完全治癒をめざして,半年間の硬性コルセット着用と運動禁止を行うことになってきました.
小学校高学年で発症した腰椎分離症はこの治療法で骨癒合率90%とかなり治癒率が高いのですが,小学生で分離症をおこす子供はスポーツに熱心なご両親が非常に多く,子供を説得する以上に,ご両親の理解を得るのが大切になります.

膝鵞足炎|ランナーに多い膝内側の痛み

鵞足炎は主にランニングにより発症するスポーツ障害ですが,サッカーやバスケットでも発症します.

膝鵞足炎 縫工筋や薄筋,半腱様筋が脛骨に付着している部分がガチョウの足に似ているために鵞足(がそく)と呼ばれ,そこがランニングなどの動作で引っ張られて炎症を起こすといわれていますが,鵞足炎の本態は腱同士あるいは腱と骨がこすれて炎症(滑膜炎)起こしているものと考えられます.

右図の膝MRI側面像(左側が前)では,黄矢印で示される半腱様筋腱(黒くひも状に見える部分)が周囲の白い炎症をおこした滑液包のなかに映し出されています.

ここまで滑膜炎が拡大すると,日常動作にも支障をきたします.すねの上側,膝内側の痛みがなかなか引かない場合は, 鵞足炎のほかに,脛骨疲労骨折を疑います.

肩関節関節唇損傷や腱板損傷

 新学期を迎え,この1週間,非常に気になっていることがあります.

 中学生になって,硬式野球クラブチームに転向した野球少年が野球肩や腰痛で受診することの多いこと,多いこと.WBCの2連覇という,歴史的快挙に触発されたのか,実際にどのくらいの新中学生が,硬式野球に転向したのかわかりませんが,今年はとみに多く見られます.

 中学校の3年間は成長期で,本当に身長が伸びます.中学生になって,成長ホルモンの分泌も活発になり,骨も伸びる準備をはじめて,骨の成長軟骨がやわらかくなっています,冬が終わり,春の到来とともに,雪解け水で地面が柔らかくなり,植物が芽を出そうとしているのと同じ状態です.

 そのような時期に,今まで慣れ親しんだ軟式ボールから,重くて硬い,硬式ボールや,硬式のバットに変えてしまうとどうなるか?一部の生徒は適応できますが,筋力もない,骨も柔らかい,新入生は壊れてしまうことでしょう.肩関節の関節唇損傷や腱板損傷を起こす前に,骨が悲鳴をあげて,上腕骨の疲労骨折や,骨端線離開(骨折の一種)を起こしてしまいます.

 早くから,硬式野球に変更させるメリットも否定はできませんが,高校生になってから硬式野球に転向しても,半年で追いつけるという意見も見られます.学校のクラブ活動には所属せず,クラブチームで硬式野球をさせるのが,はたして良いのか難しい所です.子供の成長を楽しみながら,でも,無理をさせずに,暖かく見守ってあげる事も大切かと思います.

ホノルルマラソン2008

20070814

毎年,この時期になるとホノルルマラソンに参加される方が数名こられます.

昨年のホノルルマラソン参加者は27,829名(内日本人17,056名)とのこと.また,制限時間がなく,安心して走れるホノルルマラソンは初マラソンのランナーが半数を占め,日本人参加者の多さに比例して,当院を受診される方が多いのも納得です.

夏ごろから走りこんできて,本格的に走行距離を伸ばしてくると,いろいろなところに障害が出てきます.主なものは,ランナー膝,シンスプリント,足底腱膜炎,外脛骨障害等等.すべてレントゲンは異常なしと言われて来院されるケースが,多くみられ,あと2週間で改善できるものはそう多くありませんが,稲毛整形外科でも何とか知恵を絞って対応しています.

フルマラソン完走後は,大腿骨や脛骨,踵骨の疲労骨折や骨挫傷で痛みがしばらく続きます.MRIで骨の中の変化を認めたら,1ヶ月は過度な練習を控えなくてはなりません.帰国後,1週間経っても痛みが取れないときは,スポーツドクターのいる整形外科を受診してください.

皆様の完走を,寒い寒い日本から応援しております.