前鋸筋麻痺|稲毛整形外科

前鋸筋麻痺とは、前鋸筋という胸郭の外側にある筋肉の機能が低下する状態です。前鋸筋は、肩甲骨を胸郭に固定する役割を果たしており、前鋸筋麻痺になると、肩甲骨が胸郭から離れて突き出す「翼状肩甲骨」という症状が現れます。これにより、肩関節の可動域や力が低下し、腕の挙上や回旋などの動作が困難になります。

前鋸筋麻痺の原因は、主に前鋸神経という神経の損傷です。前鋸神経は、頚部から腕にかけて走行する神経で、前鋸筋を支配しています。前鋸神経は、外傷や圧迫などにより容易に損傷されることがあります。例えば、交通事故やスポーツなどで頚部や腕を強く打つことや、長時間の姿勢不良や重い荷物を持つことなどが原因となることがあります。また、感染症や免疫疾患などの全身性の疾患や、腫瘍や血栓などの局所的な病変も原因となる可能性があります。

前鋸筋麻痺の診断は、主に臨床所見と画像検査により行われます。臨床所見では、肩甲骨の形態や動きを観察し、前鋸筋の力や感覚を評価します。画像検査では、X線やMRIなどで頚部や腕の構造を詳しく調べ、神経の圧迫や断裂などの異常を確認します。また、電気生理学的検査という方法で神経の伝導速度や筋電図などを測定し、神経の機能障害の程度や部位を特定します。

前鋸筋麻痺の治療は、原因によって異なりますが、一般的には保存的治療と手術的治療の2つに分けられます。保存的治療では、まずは安静にして神経の回復を待ちます。また、薬物療法や物理療法などで痛みや炎症を抑えたり、筋力や可動域を改善したりします。手術的治療では、神経の圧迫や断裂が明らかな場合に行われます。神経の解放や移植などで神経の通路を回復させたり、他の筋肉や腱を移動させて前鋸筋の代償を行ったりします。

リトルリーグ肩|上腕骨近位骨端線離開

リトルリーグ肩
こどもの野球肩は大人の野球肩と異なり,上腕骨の成長軟骨での障害が多く認められます.

成長軟骨に過大な力が加わると骨折するのですが,成長線の部分の骨折なのでレントゲンでは判別できません.診断は圧痛点や可動域などの診察による臨床所見で判断します.

画像は明らかに骨折していた野球少年の肩のレントゲン画像です.初診時(左)よく見るとすでに骨の隆起が見られますが,3週後のレントゲンでははっきりと仮骨が形成されています.これでひとまずは治った状態としていいのですが,原因となる投球フォームや練習頻度などを修正しないと同じことの繰り返しになってしまうので要注意です.

ここまで明らかに成長軟骨の部分で骨折していると,骨端線の部分で成長することができなくなり,将来的に骨の変形や上肢長の左右差が出たりする可能性があります.

肩鎖関節脱臼|手術治療

肩鎖関節脱臼肩から落下して鎖骨が折れて飛び出してる

という患者さんには,まず,肩関節を覆っている骨は肩甲骨で,肩甲骨と鎖骨の継ぎ目,いわゆる肩鎖関節というところの靭帯が切れて,脱臼しているということの説明から始めます.

右写真の黄矢印のところが肩鎖関節で,通常は同じ高さにあるのですが,鎖骨が筋肉に引っ張られて上のほうに転位しており,そこが飛び出したように見えるのです.

脱臼の程度により,痛み方も様々ですが,通常は2,3週間で痛みが取れるので,急性期の鎮痛処置だけで治療は終わりますが,跳ね上がった鎖骨端の外観上の変形は残ってしまいます.

この変形を治そうとすると,手術が必要になるのですが,いまだにいい手術法がなく,日本骨折治療学会のホームページでも ”各医療機関の得意な方法で手術をしています。各医療機関にて詳しい説明を受けて下さい。” とあります.

いい手術法,いわゆるgolden standard(標準)といわれる方法がないのはなにをやってもいい悪いは別にして結果(予後)は現段階では同じということだと思います.

 

肩腱板損傷;インナーマッスルの筋萎縮

今日は筋萎縮の話.

最近足がつりやすいとのことで来院された患者さん.通常は神経系の異常でつりやすくなるので、腱反射などの所見を診るも正常範囲.足くびがうまく動かせず,アキレス腱が断裂していた.よく話を聞いてみると半年以上前に受傷していた.痛みがないので普通に生活していたが,アキレス腱が付着しているヒラメ筋が異常に頑張っていたため、仮性肥大を起こし,異常につりやすくなるものと思われた.

このケースのように筋肥大を起こす場合もあるが、通常は腱が断裂するとその筋肉は動かなくなるため、筋線維の体積が減少し、筋肉は細くなるだけである.

肩の腱板損傷でインナーマッスルが動かなくなると,右MRIのように筋肉が委縮する(黄矢印;筋肉の間に白いスペースができてしまう)だけでなく、脂肪変性を起こしてしまい、回復に長期間を要する.腱板断裂の患者さんのMRIを注意して見ていると結構脂肪変性が多く認められる.

通常の大腿四頭筋などアウターマッスルが筋萎縮を起こしても足が細くなるだけで,脂肪にはならないので,インナーマッスルだけが脂肪変性を起こすとの仮説を立ててみたが,私の腹筋はアウターマッスルにもかかわらず,脂肪変性を起こしているようだ.