野球肩と野球肘の関係|稲毛整形外科

野球肩と野球肘の関係について

野球肩と野球肘は、投球動作によって引き起こされる上肢の障害です。野球肩は、肩関節の軟骨や靭帯が炎症や損傷を受けることで、痛みや可動域の制限を引き起こす状態です。野球肘は、肘関節の内側にある尺骨側副靭帯が炎症や断裂を起こすことで、痛みや腫れ、しびれなどの症状を引き起こす状態です。野球肩と野球肘は、それぞれ別の部位の障害ですが、実は密接な関係があります。

投球動作は、上腕骨と前腕骨の間の角度(肘屈曲角)と、上腕骨と胴体の間の角度(肩外旋角)によって特徴づけられます。投球動作は、一般に以下の4つのフェーズに分けられます。

  1. ワインドアップフェーズ:投手が足を上げて体重を後ろに移動させるフェーズです。このフェーズでは、肘屈曲角は約90度、肩外旋角は約0度です。
  2. コッキングフェーズ:投手が腕を振り上げてボールを後ろに引くフェーズです。このフェーズでは、肘屈曲角は約90度から120度、肩外旋角は約90度から180度まで増加します。
  3. アクセラレーションフェーズ:投手が腕を振り下ろしてボールを投げるフェーズです。このフェーズでは、肘屈曲角は約120度から20度まで減少し、肩外旋角は約180度から0度まで減少します。
  4. ディセラレーションフェーズ:投手が腕を振り切ってフォロースルーするフェーズです。このフェーズでは、肘屈曲角は約20度から0度まで減少し、肩外旋角は約0度から-90度まで減少します。

このように、投球動作は、肘屈曲角と肩外旋角が同期して変化する複雑な運動です。しかし、この同期が乱れると、野球肩や野球肘の原因となります。例えば、コッキングフェーズで肘屈曲角が過度に大きくなると、肩外旋角が不足し、肩関節に過剰な負荷がかかります。これが野球肩の一つの原因です。逆に、アクセラレーションフェーズで肘屈曲角が過度に小さくなると、肩外旋角が過剰になり、肘関節に過剰な負荷がかかります。これが野球肘の一つの原因です。

したがって、野球肩と野球肘の予防や治療には、投球動作の分析や改善が重要です。

これらのフェーズの中で、特にアクセラレーションとディセラレーションが野球肩と野球肘の原因となります。アクセラレーションでは、肩関節にかかる内旋トルクが最大になります。これによって、肩関節の前方にある軟骨や靭帯が摩耗や断裂する可能性があります。また、肘関節にかかる屈曲トルクも最大になります。これによって、肘関節の内側にある尺骨側副靭帯が伸展や断裂する可能性があります。ディセラレーションでは、肩関節にかかる外旋トルクが最大になります。これによって、肩関節の後方にある軟骨や靭帯が圧迫や損傷する可能性があります。また、肘関節にかかる伸展トルクも最大になります。これによって、肘関節の外側にある橈骨側副靭帯が圧迫や損傷する可能性があります。

野球肩や野球肘を予防するには、正しい投球フォームを身につけることや、ウォーミングアップやストレッチングをしっかり行うことが大切です。