腱断裂,靭帯断裂の治療期間|スポーツ復帰

 腱といえばアキレス腱が有名ですが,アキレス腱断裂も正常歩行に最低2ヶ月.スポーツ復帰は半年程度必要です.

 前十字靭帯手術後はスポーツ復帰までおよそ8ヶ月,競技復帰には1年弱が目安になっています.

 膝蓋腱は大腿四頭筋に直接つながっているので,術後早期の筋力訓練もままならず、リハビリがさらに大変です.

 膝蓋腱は前十字靭帯の約3倍の太さで5倍の強度があり,そう簡単に切れることはありませんが.ジャンパー膝(膝蓋靱帯炎)やオスグッド病などでお皿の下まわりの痛みを放置していると,切れることがあります.スポーツ外傷以外では透析患者さんの中に,何もしていないのに歩行中に切れる、自然断裂を時々見かけます.

 今年の冬は冷え込みが長引き,アキレス腱を切る方が少なくありません.入念なウォームアップとストレッチが必要です.春までもう少し…

脛骨疲労骨折|フルマラソン後長引く膝痛

脛骨疲労骨折フルマラソン後,1ヶ月たっても膝の内側の痛みがとれず来院.本人はランナー膝と思っていたとのこと.フルマラソンに向けてかなり追い込んだらしい.

狭義のランナー膝は外側の腸脛靭帯炎をさし,内側のこの部位の痛みは鵞足炎.どちらにしても,普通はストレッチと安静でよくなるはず.

引き続きリハビリで経過を見ていても,軽快傾向なく,半月板や軟骨損傷の可能性もあるためMRIをとってみると.鵞足部に一致して脛骨疲労骨折の所見.画像を見て,本人も納得.T字杖を1ヶ月ついてもらって,完治しました.

フルマラソン後,足腰が痛むのは当然といえば当然ですが,1ヶ月以上痛みが取れない場合は要注意です.

関節軟骨損傷,離断性骨軟骨炎の治療|膝関節フォーラム

 土曜日に池袋で開催された膝関節フォーラム(第26回)に行ってきました.  

 膝関節フォーラムは当時の若い先生たち(だけ)で膝のことを議論しようと作られた研究会で,世話人は55才定年制となっており,今回は宗田 大 東京医科歯科大学整形外科教授が幹部引退との事.20年前の白熱した議論が思い出されます.

 大学で膝の研究をしていたころは毎年参加していた研究会.開業してからは,足が遠のいてしまいました.今回,代診の先生が,行っていいよといってくれたので,医院のことが気になりながらも,思い切って行ってきました.

 今回のテーマは離断性骨軟骨炎.整形外科の分野もバイオテクノロジーの恩恵にあずかり,骨髄幹細胞による軟骨移植などの話題も豊富で,10年前から培養軟骨移植は行われていますが,一般的ではないという意味で,実用まであと少しという印象でした.

 再生した軟骨は線維軟骨といって,本来の硝子軟骨とは異なるものであり,それでいいのかわるいのか,といった哲学的な議論もありました.(歯の再生なんかしないで,入れ歯じゃだめなの?という議論と同じです.)

 昨今の経済情勢では,人工関節じゃだめなの?と一刀両断に切られそうな話題,損傷,欠損した軟骨を本来の硝子軟骨に戻すことが,全ての人に受け入れられる研究者の夢です.保険診療で軟骨移植ができるようになれば,加速度的に進歩すると思うのですが…

恥骨下枝疲労骨折|女性ランナーの股関節痛(鼠径部痛)の原因

女性ランナーの股関節痛(鼠径部痛)の原因のひとつに恥骨下枝疲労骨折があります.

 長時間のランニングでは骨盤への繰り返しのストレスにより,あらゆる部位に疲労骨折を生じます.女性ランナーの疲労骨折は会陰部の恥骨下肢に多く認められ,内股や下腹部に放散痛を生じ,走行不能となります.

クリックで6週後の画像へ 恥骨下肢には大内転筋が付着しており,着地から蹴り出し期にかけて,大臀筋の股関節に対する外旋作用を打ち消しています.このバランスが崩れると,骨にストレスがかかり,疲労骨折を起こします.

 若い女性ランナーに多いのは,貧血,ダイエット,ホルモン異常による生理不順や無月経,骨密度の低下などが基盤にあると考えられています.(David Klossner,2000)

 早期の診断には骨シンチグラフィーやMRIが有効で,レントゲンでは異常なしとされる場合も多く見られます.治療は骨折が治癒するまで運動を制限する必要があり,数ヶ月間を要します. .

 スクワットで膝関節を伸展していく際に,膝が内側に入ってしまう方や,ランニングで膝が内側を向いてしまう方(いわゆる女の子走り)は,内転筋と大殿筋とのバランスが乱れていることが考えられます.

ナン君におまかせ!ランナーのための痛み解消クリニック 膝その2

 ランニングスタイルに連載中のランナーのための痛み解消クリニックは,前号に引き続き,膝の痛みについて.なんと私が安田美佐子さんのとなりに・・・(関係ないっか.

 膝関節内のランニング障害は,放置していると,必ず故障につながる部位なので要注意です.

 ホノルルまでもうすぐ1ヶ月.当院の外来にも,走行距離をあげて痛みが出たランナーがちらほらと来られますが,まだ間に合います.

 異変を感じたら,早めにフォームチェックや,ランニングの量や質を調整して,ランニング障害を予防する必要があります.