関節軟骨損傷,離断性骨軟骨炎の治療|膝関節フォーラム

 土曜日に池袋で開催された膝関節フォーラム(第26回)に行ってきました.  

 膝関節フォーラムは当時の若い先生たち(だけ)で膝のことを議論しようと作られた研究会で,世話人は55才定年制となっており,今回は宗田 大 東京医科歯科大学整形外科教授が幹部引退との事.20年前の白熱した議論が思い出されます.

 大学で膝の研究をしていたころは毎年参加していた研究会.開業してからは,足が遠のいてしまいました.今回,代診の先生が,行っていいよといってくれたので,医院のことが気になりながらも,思い切って行ってきました.

 今回のテーマは離断性骨軟骨炎.整形外科の分野もバイオテクノロジーの恩恵にあずかり,骨髄幹細胞による軟骨移植などの話題も豊富で,10年前から培養軟骨移植は行われていますが,一般的ではないという意味で,実用まであと少しという印象でした.

 再生した軟骨は線維軟骨といって,本来の硝子軟骨とは異なるものであり,それでいいのかわるいのか,といった哲学的な議論もありました.(歯の再生なんかしないで,入れ歯じゃだめなの?という議論と同じです.)

 昨今の経済情勢では,人工関節じゃだめなの?と一刀両断に切られそうな話題,損傷,欠損した軟骨を本来の硝子軟骨に戻すことが,全ての人に受け入れられる研究者の夢です.保険診療で軟骨移植ができるようになれば,加速度的に進歩すると思うのですが…

2位ではだめなんです

 政府の行政刷新会議の作業グループによる事業仕分けが終了.「日本オリンピック委員会(JOC)の選手強化事業」や,「スーパーコンピューター計画」,官民共同開発の中型ロケット「GX」計画など,スポーツ,科学技術分野の事業が次々と凍結や予算削減と判定された.

 民主党の蓮舫参院議員が「世界一を目指す理由は何か.2位ではだめなのですか」と発言したことが話題になった.名言か迷言かといった議論がある中,科学者は猛反発.

 一番を目指すから,記録の向上,技術の進歩があるんです.結果として2番になったとしても,努力することが大事なのではないでしょうか.

 マラソンは2位が金メダル,サッカーは点を多くとられたほうが勝ちではだめなんです.

今日はWBC世界フライ級王者内藤大助と同級3位亀田興毅因縁の対決.

KOされたほうがチャンピオン?

脊髄腫瘍(馬尾腫瘍)|両足のしびれはMRIで

 両足と会陰部(肛門周囲)にしびれがあり,来院.

 腰痛はないので,本人はあまりMRIとりたくないようだったが,両足それぞれにしびれの原因があるのではなく,腰から上,ひとつの原因で両足がしびれる可能性の方が高いことを説明し,腰のMRI検査をしてもらった.

馬尾腫瘍MRI画像 たいていは椎間板ヘルニアのことが多いのだが,下位腰椎には何もなし.異常なしか.と思って全体をみわたすと,胸腰椎移行部(黄矢印)にあやしい塊(馬尾腫瘍).

 胸腰椎移行部の脊髄は,脳からつながる,親指の太さほどの脊髄神経が,馬の尻尾のように,神経が一本ずつに分かれていく場所で,馬尾神経といわれます.馬尾腫瘍が大きくなると神経が圧迫され,膀胱直腸障害をきたします.尿がでなくなり,膀胱壁が伸びきってしまうと回復しないので,緊急手術の対象です.

 両足がしびれる場合,それぞれの足に病気があるのではなく,腰から上,頚椎や脳,血管の病気まで,多岐にわたります.ある程度の見当はつきますが,原因不明のしびれはあきらめずに,順番に検査していく必要があります.

昨日の国際千葉駅伝 日本勢が上位に

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最後尾の選手の後に続く渋滞.

その前を横断する子供たち.

パトカーの後にいる青い怪しげな車.

本当はランナーの疾走する姿を流し取りするつもりでしたが,

目の前を通過するランナーは速すぎて,ほとんどがピンボケ.

ベストショットはこの写真.(これも,どこにもピントが合っていない)

駅伝は日本勢が順当に上位入賞でした.

恥骨下枝疲労骨折|女性ランナーの股関節痛(鼠径部痛)の原因

女性ランナーの股関節痛(鼠径部痛)の原因のひとつに恥骨下枝疲労骨折があります.

 長時間のランニングでは骨盤への繰り返しのストレスにより,あらゆる部位に疲労骨折を生じます.女性ランナーの疲労骨折は会陰部の恥骨下肢に多く認められ,内股や下腹部に放散痛を生じ,走行不能となります.

クリックで6週後の画像へ 恥骨下肢には大内転筋が付着しており,着地から蹴り出し期にかけて,大臀筋の股関節に対する外旋作用を打ち消しています.このバランスが崩れると,骨にストレスがかかり,疲労骨折を起こします.

 若い女性ランナーに多いのは,貧血,ダイエット,ホルモン異常による生理不順や無月経,骨密度の低下などが基盤にあると考えられています.(David Klossner,2000)

 早期の診断には骨シンチグラフィーやMRIが有効で,レントゲンでは異常なしとされる場合も多く見られます.治療は骨折が治癒するまで運動を制限する必要があり,数ヶ月間を要します. .

 スクワットで膝関節を伸展していく際に,膝が内側に入ってしまう方や,ランニングで膝が内側を向いてしまう方(いわゆる女の子走り)は,内転筋と大殿筋とのバランスが乱れていることが考えられます.