骨挫傷とは

 最近ニュースでも見かける”骨挫傷”.病名にしていいのかどうかわかりませんが,骨の打撲のひどいものを骨挫傷と呼んでいます.

20年前MRIが一般的に普及し,筋肉や靭帯などの軟部組織の診断に用いられるようになり,骨の中の状態もわかるようになりました.そのなかで特定の撮影方法で腫れているところ(水分のおおいところ)だけを強調してみてみると靭帯損傷を起こすほどの外力を受けた患部は,骨の中も出血したり浮腫んだりしている様子が画像化されるようになったのです.

図は右膝を正面から見た内側側副靭帯損傷(黄矢印)のMRI画像です.外側(緑矢印のあるほう)から,タックルされ受傷しました,

強い力が外側からかかり,内側の側副靭帯が引き伸ばされて切れるわけですが,てこの支点となる外側の関節も,せん断力(すいか割りの原理)により,骨の内部にダメージを受けます.

単なる打撲でも2週間以上痛みが続く場合は,骨挫傷を疑う必要があります.

膝裏の痛み2-膝窩筋腱損傷|稲毛整形外科

膝窩筋腱損傷について

膝窩筋腱損傷とは、膝関節の裏側にある膝窩筋という筋肉の腱が炎症を起こしたり、断裂したりする状態です。膝窩筋腱損傷とは、膝の裏側にある膝窩筋という筋肉の腱が炎症や断裂を起こす状態です。膝窩筋は、膝関節の屈曲と内旋を行う筋肉で、脛骨が外旋しすぎるのを防いで膝関節を安定させる役割があります。そのため、膝窩筋腱損傷は、膝関節の痛みや不安定感を引き起こすことがあります。

膝窩筋腱損傷の症状について

膝窩筋腱損傷の主な症状は、以下のようなものです。

  • 膝関節外側に鋭い局所的な痛みがある
  • 膝の痛みが荷重位やひねり動作で誘発される
  • 長時間座った後に立ち上がるときに痛みが強くなる
  • 膝窩筋の筋腹や腱に圧痛がある
  • 膝関節の可動域が制限される
  • 膝関節に不安定感がある

膝窩筋腱損傷の原因は、下り坂での走行荷重位での下肢のひねり動作など、膝関節に反復的なストレスがかかることです。また、長時間の座位や内反膝・反張膝などの姿勢異常もリスク要因となります。さらに、交通事故やスポーツなどで、膝関節に強い外力が加わることでも発生する可能性があります。

膝窩筋腱損傷の診断は、主に触診や抵抗運動検査で行われます。痛みや圧痛がある部位を特定し、膝窩筋の屈曲・内旋に対する抵抗で症状が誘発されるかどうかを確認します。また、画像診断ではMRIが有用で、靭帯や半月板などの合併症も評価できます。

膝窩筋腱損傷の治療は、保存的な方法が一般的です。まずは安静にして炎症を抑えることが重要です。そのために、冷却や圧迫・挙上などの処置を行います。また、消炎鎮痛剤やサポーターなども使用することがあります。直接的なアプローチとしては、膝窩筋腱のリリースや拘縮解消、筋力強化などを行います。膝周囲筋の筋力や関節可動域を回復させることが目的です。特に、膝窩筋やハムストリングスなどのストレッチや強化運動を行います。重症な場合や保存的治療に反応しない場合は、手術的治療を検討することもあります。手術的な治療法では、靭帯修復術や再建術を行います。いずれの場合もリハビリテーションが最も重要です。

ウサギ跳びはいつ頃から行われなくなったのか|稲毛整形外科

ウサギ跳びとは、膝を曲げ、しゃがんだ状態でジャンプしながら前進するというトレーニング法です。

今の学生さんに聞いてもウサギ跳びという言葉が通じません。1970年代頃まで日本で広く行われていた筋力トレーニング法の一つでしたが、1980年代以降はトレーニング効果が無く故障のリスクが高いと周知されて廃れました。

ウサギ跳びは膝や足首に大きな負担をかけることで、疲労骨折や軟骨の損傷、半月板の損傷などの弊害を引き起こしやすいとされています。

ウサギ跳びがいつごろから行われなくなったのかは、正確な時期は分かりませんが、1978年に静岡市立長田南中学校の野球部員がウサギ跳びで集団骨折するという事件が起きたことがきっかけで、文部省がウサギ跳びの禁止を検討すると発表したことがありました。

その後、スポーツ科学や医学の面からウサギ跳びは否定され始めたことや、トレーニング機器や合理的なトレーニング方法の知識が海外から入るようになったこともあり、1990年代末には殆ど見られなくなったと言われています。

同様の理由で階段ダッシュやおんぶ走りは、膝にかなりの負担をかける運動です。 走る際には、体重の3-4倍の衝撃が膝にかかりますが、階段ダッシュやおんぶ走りはその倍以上の衝撃が増加します。 また、バランスを保つために膝を曲げたまま走ることが多くなりますが、これも膝や腰に負担をかけます。 重症化すると、軟骨や靭帯の損傷や変形性関節症、腰椎椎間板ヘルニアなどの慢性的な障害になる恐れもあります。

膝円板状半月板|新入生のクラブ活動選択にスポーツ整形外科

 入学式のこの時分,スーツ姿のご両親と連れ添われて,新入生が新品の制服に身を包み,登校する姿をよく見かけます.

 新入生のクラブ活動選択にスポーツ整形外科が何の役に立つのかと思われるでしょうが,入学して新しいスポーツを始めようという中高生,特に今まで膝や肩,肘を痛めたことがある新中学生は必見です.

たとえば,右図のような円板状半月板で膝を痛めたことがある方.膝の半月板が生まれつき大きく,上下の骨で挟まれやすく,負荷が増えると膝痛が,出やすい構造をしています.

幼稚園のころ,遠足に行くと必ず翌日膝や股関節の痛みを訴えたり,小学校で縄跳びが流行ると,ヒザの痛みや足の痛みが出ていた子は要注意です.また,お父さんが学生時代,膝円板状半月板や膝半月板損傷で手術していたりするとその可能性が高まります.

円板状半月板は症状がなければ予防的に手術することはありませんが,中学後半から高校にかけて運動量の増大に伴い,断裂することがあるので,どのスポーツをはじめるか,迷っている場合は,スポーツ整形外科でどちらがカラダに負担が少ないか相談されてみてもよいかと思います.

前十字靱帯損傷|前方引き出しテスト

膝前十字靱帯損傷は,スポーツ外傷の代表で,様々な種目のトップアスリートが受傷してスポーツニュースでもたびたび取り上げられているので,聞いたことがある方も少なくないと思います.

膝前十字靱帯が断裂すると膝関節の前後方向の安定性が損なわれ,カッティング動作での不安感や膝がガクッと外れる感じが顕著となり,スポーツ動作に支障をきたします.

徒手検査で膝を90度に曲げてすねの骨を前方に持ち上げるようにする,前方引き出しテストが陽性であれば前十字靱帯損傷を疑います.患者さん本人からは見えないのですが,検査者からみるとあきらかに膝がぐらぐらして見えます.

右上図は膝関節のストレスレントゲンでその動きを見たところです.写真にカーソルを合わせると前方引き出し時の写真になりますが,すねの骨が1cm以上前にずれているのがわかります.

前十字靱帯損傷の膝痛は2,3週もすればなくなります.こんなにずれるなら,自分でもわかると思うのは間違いで.ゆるいのは力を抜いた状態で検査しているときだけ.
通常の歩行時や運動時では周りの筋肉も膝を支えているため,患者本人が前十字靱帯損傷に気づかずにスポーツに復帰して,再受傷して二次的に半月板損傷などをきたして痛みにより来院される場合が少なくありません.

前十字靱帯損傷はMRI検査で確認できるので,MRIをとれば確定診断は容易ですが,まず前十字靱帯損傷を疑い,診察しないとその機会は失われてしまいます.
膝が抜ける感じや違和感,受傷時に異音を聞いたなどのエピソードがあればまずスポーツ整形外科を受診してください.