変形性膝関節症|外側半月板損傷なれのはて

変形性膝関節症|外側円板状半月板損傷 右図のレントゲンは右ひざの正面像です.右ひざをひねってから痛みが取れず他の外科を受診したもののレントゲンは異常なしと言われ当院受診されました.

レントゲンをみると外側の関節の隙間が内側に比べ,狭くなっており,変形性関節症の第二期まで進行しています.ちょっとひねっただけで隙間が狭くなることはないので,いままで無症状だったものの,ちょっとひねったことをきっかけに痛みが取れなくなったものと考えられます.

よくみると骨の形も内側の滑らかな曲線に比べ,外側は白っぽくなって,辺縁がとげとげしくなっています.白っぽくなっているところは石灰成分が多いところで,骨の負担が強くて骨が固くもろくなっている所見で,変形性関節症の中期以降によくみられます.

ひねっただけで骨が折れるわけないのでレントゲンは異常なしと言われたのでしょうが,しっかり所見を読み飛ばしていたようです.

外側の関節の膝変形性関節症は比較的頻度が少なく,前々回診療日記で触れた,膝外側半月板損傷や膝外側円板状半月板損傷の放置例によく見られます.膝の関節は内側に体重が多くかかるため,意外に痛みやロッキングなどの症状は軽く,20年後,30年後に痛みが出てきて受診するパターンが結構あります.手術しなくても20年,30年もったからいいかなという考えもなくはないですが,いったん症状がでると,もう軟骨まですり減っているので元通りというわけにはいきません.

膝前十字靱帯損傷|手術しない選択

膝前十字靱帯損傷でも手術しない選択もあります.前十字靱帯損傷を手術しないとどうなるのか,そして前十字靱帯損傷再建術をしたほうがいい場合について述べます.

スポーツ中のカッティング動作や接触で膝を捻挫した時,前十字靱帯に300kg以上の力がかかると前十字靱帯は切れます.完全断裂の前十字靱帯を内視鏡で見ると,切れた靭帯の断端は関節の中を海藻のようにゆらゆらと漂っています.自然に上のほうにのびて再び300kgの力に耐える靭帯にもどることはあり得ません.もともと張力がかかってぴんと張っていたものなので,切れただけで縮んでしまい,反対側の断端ははるか彼方に漂っています.→詳細は膝前十字靱帯損傷|なおらない理由をご覧ください.

膝前十字靱帯損傷をおこしてしまったら元の状態には戻りません.手術をしないと機能的にも階段の下りで膝がガクッと外れたり,方向転換するときの怖さが残ってしまいます.

では,前十字靱帯損傷でも手術しなくても大丈夫な場合はどんな場合か?

膝前十字靱帯300kgで切れると書きましたが日常生活では前十字靱帯がなくても歩けます.軽いスポーツでも走れます.曲がれます.ただ瞬時の方向転換で筋力で体を支えきれなくなった時だけ前十字靱帯ががんばっていたのがなくなったせいで,自分の意図しないところで膝が外れて痛い思いをします.ですから外れるほど動かない人や,筋力が十分にあって膝を軽く曲げた状態でしっかり踏ん張れる人は膝前十字靱帯損傷で手術しない選択もありでしょう.ただし競技スポーツは除く!です.

高2の夏に前十字靱帯損傷を受傷したバスケ選手.手術するとスポーツ復帰は高3の秋になるので夏のインターハイに間に合わないということで手術しない選択をしました.受傷後1か月ほどで走れる状態になり,6週でスポーツ復帰しました.しかし復帰したとたん膝が外れそうになり,それ以来テーピングが手放せない状態.それでも筋力訓練やアジリティトレーニングをしっかりやって高3の夏までバスケを続けることができました.

本人は最後まで大会に出たことで満足していましたが,1年前切れていなかった半月板が切れかけていました.秋に前十字靱帯再建手術予定ですが半月板縫合術も追加になってしまいました.先のことはわかりませんが,軟骨も結構ダメージあったのではないかと思います.この先手術しなければ変形性関節症必発だろうと思います.

たまに手術しないで放置してしまった患者さんも見かけますが,おそらく切れた前十字靱帯の断端が後十字靱帯や大腿骨側の滑膜などに癒着して治っている状態とおもわれます.どの切れ方ならなおって症状が出ないかというのはまだわかっていませんが,不全断裂なら手術しない選択もあるのかもしれません.たまたま症状が出ないだけでゆるいまま何とかなっている人もいるようですが,基本的には前十字靱帯損傷で完全断裂なら手術したほうがよさそうです.

膝円板状半月板|手術しない選択

膝円板状半月板を手術しましょうと言われた.でも膝円板状半月板は手術しない選択もあります.ここでは切れていない(半月板損傷をおこしていない)円板状半月板を予防的に手術すべきかどうか,そして手術したほうがいい場合について私見を述べます.

膝円板状半月板は膝の外側の半月板に多く見られる先天性の病気です.日本人に多く頻度は5-10%と多いものの無症状で一生過ごすことも多く,明らかな発生頻度はわかっていません.

円板状半月板手術しない通常の半月板に比べると正常では三日月形をしており,大腿骨と脛骨が直接接しているのに対し,円板状半月板はその名の通り半円形の中心部も埋まった半円柱状となっているため上下の骨に杖に挟まった状態となっています.

そのため,幼少期では無症状の場合が多いのですが,幼稚園で遠足やディズニーランドなど,一日歩くと痛みが出やすく,すぐに抱っこをねだってきたり,夜,足をいたがって泣いたりする子は円板状半月板の可能性があります.

遺伝性も見られ,膝が反るほどピンと伸びにくくご,両親どちらかが円板状半月板手術を行っていたら円板状半月板かもしれません.

円板状半月板は,先天性ながら無症状の方も多いと書きましたが,痛みを出してくるのは,だいたいスポーツ活動の始まる中高生世代から多く見られます.体重も増え,部活で痛みを我慢しながら続けていると,最後は円板状半月板損傷という形で,半月板がきれてロッキングという状態になり,膝が曲がりも伸びもしなくなり,受診することになります.

何かの拍子にロッキング外れることもあるのでそのまま運動続けることもできますがその後引っかかりやすくなり,頻繁にロッキングを起こします.それでもむりやりやっていると挟まっている部分がばさばさになりちぎれて擦り切れてしまうので引っかからなくなります.

そういう意味では手術しない選択もありかもしれませんが,数年を要します.もしかしたら10年以上,ロッキングの恐怖と闘いながらスポーツを行うことになります.円板状半月板がロッキングしたら再発傾向があるので,時期を見て内視鏡で引っかかった円板状半月板を正常の形に削る,半月板形成術をしてもらうのがいいと思います.入院は長くても2,3日,1週目からジョギングもできると思います.

痛みだけで予防的に円板状半月板切除手術をすすめられることもありますが,膝の伸展制限がなく,引っ掛かりの度合いが軽ければ,スポーツ活動度を減らすことで痛みは治まります.

膝円板状半月板手術をすすめられたけどすごく迷っている方は,数か月様子を見て治らなければ手術を検討されても遅くなることはないので手術しない選択もありだと思います.(個別の症状によりすぐに手術のほうがよい場合ももちろんあります)

円板状半月板損傷の場合は…長くなったのでまた後日あらためてupします(^o^)

 

膝前十字靱帯損傷|なおらない理由

膝前十字靭帯は.関節内靭帯といって関節液で満たされた関節腔という空間にあるため,血流に乏しく,関節内にある軟骨や半月板と同じく,非常に治りにくい組織です.

血流に乏しく,自然治癒が期待しにくいことに加えて,前十字靱帯は大腿骨と脛骨をつなぐ硬い紐のような構造で,上下に張力がかかっているため,損傷すると組織の連続性がたたれ,完全断裂では右図MRのように垂れ下がった状態となっており,アサガオのつるのように上に延びていくわけではなく,自然治癒することはありません.

膝前十字靭帯損傷では靭帯が伸びているといわれて来院するケースも少なくありませんが,伸びた靭帯がゴムのように縮むわけではありません.詳しくはスポーツ外傷・障害の診断と治療-総論 靱帯損傷のページもあわせてご参照ください.

骨端線損傷|成長期の骨折|春スキー

大腿骨遠位骨端線損傷来週は3月.一時の寒さも緩み,肩に力を入れなくても外を歩けるようになってきました.

今回の患者さんは8才の男の子.人生初めてのスキー.リフトを降りてスキーをはかせてもらい,雪面に立った瞬間滑り出し,猛スピードで転倒!一回も曲がることなく診療所で応急処置をしてそのままUターンで当院受診.

圧痛点は右上の大腿骨にある骨端線という場所に一致して認め,成長期の骨に見られる成長線の骨折が疑われました.

しかし骨端線の上の黒い影も病的骨折の疑いがあり,がんセンターに問い合わせ,成長期の正常変化だろうということで,診断は大腿遠位骨端線損傷としました.悪性には見えないもののがんセンターに紹介されたということだけで非常に心配させてしまいました.

毎日診察しているので患者さんからタイムリーにスキー情報を聞けるのですが,関東北部や東北の蔵王までももう雪は緩んでいるとのことです.雪が重くなるとケガも増えるので,くれぐれも注意してください.

スキーのハイシーズンもそろそろ終わり.

寂しい気もしますが,心には別の春風が吹いていることと思います.