こどもの膝痛
日常診療でよく見かけるこどもの膝痛.成長痛と診断されているものが多く見られますが,成長による骨そのものの膝痛以外に,生まれつきの円盤状半月板や股関節の病気で起こる膝痛が原因となっている膝痛もあります.
こどもの膝痛の原因と病態
乳幼児期のこどもに見られる膝痛は,夜間痛が多く見られます.レントゲンでは異常なく,成長痛と診断さるケースが多いものの,遠足にいってたくさん歩いた後や,公園で朝から晩まで遊んだ夜に痛む場合は,器質的な原因を認める場合もあります.
- 膝円板状半月板 生まれつき半月板が大きく,膝がまっすぐ伸ばせないことがある.
- 習慣性膝蓋骨脱臼 転びやすい.走るのが遅い.立ち上がる時,膝を手で支えて立ち上がる.
- 膝蓋軟骨軟化症 膝のお皿(膝蓋骨)が内側を向いている.にらめっこ膝
- オスグッド病 小学校高学年の男の子に多い
- 色素性絨毛性滑膜炎 膝関節の内側にある絨毛という滑膜の組織が出血しやすく,関節内に血がたまって痛みを生じる腫瘍性疾患(まれ)
- ペルテス病 股関節の骨が壊死を起こす病気で膝痛だけを訴える場合も少なくない.小学校低学年の男の子が中心(まれ)
- 骨肉腫 大腿骨と下腿骨は骨肉腫(骨の悪性腫瘍)の後発部位(ごくまれ)
こどもの膝痛の診断と治療
こどもの膝痛の診断は,問診と必要最小限のレントゲン検査で行います.足全体が痛み,どこが痛むのかわからない場合も多く,ご両親の細かい観察も診断の助けになります.
成長痛
よくいわれる成長痛ですが,医学的な詳細はわかっていません.骨は全体が均一に伸びていくのではなく,骨の両端の少し内側(骨幹端)にある成長線という部分で細胞分裂を繰り返し,伸びていきます.この部分が負荷にさらされると安静時にも痛みを生じると考えられます.
こどもの心因性の膝痛
兄弟ができて,下の子の育児にかかりっきりになると,上の子が膝痛を訴えることがよくあります.膝が痛いというと夜も付っきりでそばにいてくれる.病院にも連れて行ってくれる.長い時間お母さんを占領できるので,また膝が痛くなる.この循環で本当に膝が痛くなるのですが,専門医で異常なしと診断されれば,アイシングなどで様子を見てください.甘やかしも禁物ですが,下の子だけでなく,お兄ちゃんお姉ちゃんにもやさしく接することが大事だと思います.