鼠径周辺部痛症候群

原因不明の股関節痛

サッカー少年 右大腿四頭筋付着部の剥離骨折 運動禁止1ヶ月

アスリートの股関節痛は比較的頻繁にみられますが,レントゲン検査では異常なく,腰から・・・などと言われることが少なくありません.
サッカーで発生例が多いためにプロサッカーの歴史が長い,ヨ一ロッパで早くから,鼠径周辺部痛症候群(Groin pain syndrome)として,さまざまな治療が試みられてきました.
いわゆるスポーツへルニアを含んだ,運動による慢性の股関節・鼡径部周辺の痛みの原因として注目されています.

鼠径周辺部痛症候群の原因と病態

拘縮や痛みが出現しやすい鼠径周辺部(解剖学的構造上鍛えても強化しにくい鼠径管後壁の脆弱化部分)にさまざまな痛みが出ます.
鑑別診断
原疾患の治療を優先
剥離骨折(下前腸骨棘,坐骨二頭筋付着部)・疲労骨折(大腿骨頸部,恥骨下枝)
女子長距離選手の鼠径部痛
内転筋付着部炎・腹直筋付部炎・内転筋腱や腹直筋腱の炎症,拘縮・閉鎖神経のエントラップメント・スポーツヘルニア・恥骨の薄筋腱付着部の剥離骨折・腸腰筋の炎症
腰椎椎板ヘルニア・腰痛・変形性股関節症・大腿骨骨壊死・股関節関節唇障害
真性の鼠径ヘルニア・腫瘍・感染(泌尿器,股関節,リンパ節,腸筋)・膠原病など

鼠径周辺部痛症候群の診断と治療

この病態に対してつけられた症候群はまだ教科書に載るほど,認められた病名ではなく,腰痛併発例は手術をしても腰痛が改善しない限り,鼠径部痛は改善せず,逆に腰痛がある例では手術をしなくても腰痛が改善すればその時点で,関連する鼠径部痛が改善することが多いことから,現存の病名との鑑別診断が重要です.
恥骨結合炎 恥骨結合の圧痛とX線上の恥骨結合の浸食像は無症状の選手を含め多くの例で認められ,自発痛がないにもかかわらず,恥骨結合炎の診断をくだすことには異論があり,恥骨結合そのものに自発痛が発生することはきわめてまれ.

鼠径周辺部痛症候群のアスレティックリハビリテーション

腰背部・ハムストリング・内転筋の拘縮を改善させ,中殿筋を中心とする股関節周辺の筋緊張,拘縮を緩和させ,柔軟性を高め,バランス良く強化することによって,腹直筋・内転筋への負荷を軽減軽減させることが必要です.

鼠径周辺部痛症候群(Groin pain syndrome)以外の股関節痛の原因

関節外の股関節痛の原因として鼠径周辺部痛症候群(Groin pain syndrome)が注目されていますが,股関節痛の原因としての関節内病変を無視してはいけません.関節唇損傷や剥離骨折,骨軟骨損傷などはレントゲンやMRI検査で簡単に診断できるので,まずスポーツドクターのいる整形外科を受診して,ご相談ください.(稲毛整形外科 南出)