腰椎すべり症|稲毛整形外科

腰椎すべり症とは、腰の骨(腰椎)が正常な位置から前方や後方にずれてしまう病気です。このずれによって、脊柱管という神経の通り道が狭くなり、神経が圧迫されて痛みやしびれなどの症状を引き起こします。腰椎すべり症は、加齢や出産、体重増加などによって腰椎の椎間板や関節、靭帯が変性したり、ゆるんだりすることで起こることが多く、特に中高年の女性に多い病気です。

腰椎すべり症の症状

腰椎すべり症とは、腰椎の骨が前方にずれることで、神経や血管に圧迫をかける病気です。腰椎すべり症の症状には、以下のようなものがあります。

  • 腰痛:腰椎すべり症の最も一般的な症状です。腰部に鈍い痛みや重だるさを感じます。長時間の立ち仕事や座り仕事、重いものを持ち上げるなどの動作で悪化することがあります。
  • 下肢痛:腰椎すべり症で圧迫された神経が下肢に走る場合、下肢に放散する痛みやしびれを感じることがあります。特に太ももの裏やふくらはぎ、足の甲や指などに症状が出やすいです。歩行時や階段の昇降時に悪化することがあります。
  • 排尿障害:腰椎すべり症で圧迫された神経が膀胱や直腸に影響する場合、排尿障害や便失禁などの症状を引き起こすことがあります。尿意の切迫感や頻尿、尿漏れや尿閉などが起こる可能性があります。
  • 姿勢異常:腰椎すべり症で腰部の安定性が失われると、姿勢異常を生じることがあります。腰部の前弯(前かがみ)や後弯(反り腰)が強くなったり、骨盤が傾いたりすることで、体のバランスが崩れます。これにより、歩行困難や転倒のリスクが高まることがあります。

腰椎すべり症の原因と病態

腰椎すべり症の原因は、先天的なものや外傷、加齢などが考えられます。先天的なものは、生まれつき腰椎の形が異常で、ずれやすくなっている場合です。外傷は、交通事故やスポーツなどで腰椎に強い衝撃を受けた場合です。加齢は、腰椎を支える靭帯や筋肉が弱くなり、ずれやすくなった場合です。

腰椎すべり症の病態は、腰椎がずれることで神経や血管に圧迫されることがあります。圧迫されると、痛みやしびれ、筋力低下などの症状が出ます。また、腰椎がずれることで姿勢が悪くなり、腰や背中の筋肉に負担がかかります。これも痛みや疲労感を引き起こします。さらに、腰椎すべり症は進行性の病気であり、放置すると骨がさらにずれていきます。

腰椎すべり症の診断と治療法

腰椎すべり症の診断は、まず病歴や身体検査で行われます。その後、X線やCT、MRIなどの画像診断で腰椎のずれや神経の圧迫の程度を確認します。X線では、腰椎を前後に曲げた状態で撮影することで、ずれの動きや不安定性を評価できます。MRIでは、神経根や脊髄の圧迫や炎症の有無を詳しく見ることができます。

腰椎すべり症の治療法は、保存的治療と外科的治療に分けられます。保存的治療では、消炎鎮痛剤や筋弛緩剤などの内服薬、温熱療法や牽引療法などの物理療法、神経ブロック注射などが行われます。これらの治療は、神経の圧迫を和らげたり、血流を改善したりして、痛みやしびれを軽減することを目的としています。保存的治療で改善が見られない場合や、重篤な神経障害がある場合は、外科的治療が必要になることがあります。外科的治療では、固定術という手術法が一般的です。固定術では、すべった腰椎を自分の骨や金属でつなぎ止めて安定させるとともに、脊柱管を削って広げて神経の圧迫を解除する手術です。手術後はコルセットを装着して安静にし、固定した部分が癒合するまで数ヶ月かかります。

腰椎すべり症は、早期に診断されれば適切な治療で改善する可能性が高いです。しかし放置すると神経障害が進行し、歩行困難や排尿障害などの重大な合併症を引き起こす恐れがあります。したがって、腰部や下肢に持続的な痛みやしびれを感じた場合は、早めに医師に相談することが大切です