スマホ症候群

スマホ症候群とは

スマホ症候群 診療日記

 スマホ症候群とは,長時間スマホ(スマートフォンなどの携帯情報端末)を操作・閲覧 し続けることにより起こす,眼精疲労やドライアイ,視力低下などの眼の症状の他,肩こりや首凝り,手のしびれや腱鞘炎による肘や手指の痛みの症状を総称して呼ばれています.

スマホ症候群の症状

スマホ症候群には様々な症状がありますが、代表的なものは以下の通りです。

・肩こりや首こり:スマホを見るときに頭を下げる姿勢が続くと、首や肩の筋肉に負担がかかります。また、首の骨(頸椎)がまっすぐになってしまうストレートネックになると、頭痛やめまいなども起こります。
・眼精疲労やドライアイ:スマホの画面は小さく明るいため、目に負担がかかります。瞬きの回数が減って目が乾燥したり、ピント調節ができなくなったりします。
・ドケルバン病:スマホを片手で持ちながら親指で操作すると、手首の親指側の腱鞘に炎症が起こります。手首や親指に痛みや腫れが生じます。
・VDT症候群:スマホやパソコンなどの画面を長時間見ることで起こる問題です。目だけでなく、首や肩や腰などの筋肉も緊張します。また、精神的にもストレスや不安を感じることがあります。
・うつ症状:スマホを使いすぎると、自律神経のバランスが崩れて副交感神経が低下します。これにより、気分が落ち込んだり、睡眠障害や食欲不振などが起こったりします。

VDT作業における労働衛生管理

ITの普及に伴い,情報端末の操作機器としてVDT(Visual Display Terminals)が広く普及し,厚生労働省は平成14年にVDT作業における労働衛生管理のためのガイドラインを作成し,労働者の健康被害に対する注意を喚起してきました.
しかし十数年前にはここまで携帯情報端末が普及することは予測しておらず,”携帯情報端末については、長時間のVDT作業に使用することはできる限り避けることが望ましい”とだけ記載されています.
最近では,予想もしなかった超精細ディスプレイの登場により,文字の判別が困難なほど極小の文字も表示されるようになり,無理をして画面を覗き込むような姿勢が強いられています.
顔を画面に近づけて覗き込む姿勢をとると健常人でも頚椎の生理的前彎が消失し,いわゆるストレートネックの状態となるので,肩こり,頭痛(後頭部の筋緊張性頭痛)を起こしやすくなります.海外でも”smartphone syndrome”として話題になっています.
いわゆるスマホ症候群(smartphone syndrome)にならないための注意点を厚労省ガイドラインを参考に,作成してみました.

スマホ症候群にならないためには

厚労省ガイドラインでは,携帯情報端末については、長時間のVDT作業に使用することはできる限り避けることが望ましい.とありますが,個人使用のため,規制するわけにもいかず,機種選定から使用法まで個々の判断で留意する必要があります,

機種選定・設定

外装は滑りにくい素材であること.滑りやすい場合はカバーなどを装着し,保持しやすくすること
周囲の明りが映りこまないように,ノングレア処理してあるものがよい.フィルムを貼って映りこみを防止する.
画面サイズは大きいほうがbetter..手の小さな女性には大きすぎるのも不可.
ちらつき(フリッカー)は知覚されないもの(充電をしっかりしておく,冷蔵庫やエアコン室外機などのモータによる電磁波干渉をさける)
照度自動調整機能のあるものは周りとの輝度差を少なくするように作られているので自動調整機能をonにする 画面を最大輝度で見ないように
入力に必要以上指の力を使わなくてすむように,入力確認音または振動機能はon.テンキーがあればbetter.

作業環境等

ディスプレイ画面上における照度は500ルクス以下
書類上及びキーボード上における照度は300ルクス以上
画面と周囲の明るさが極端に異なると眼精疲労やドライアイの原因となるので,明るすぎない適度な照明でスマホの照度自動調整機能をonにして輝度差を少なくする事が必要.くれぐれも就寝前にベッドに入ってからの長時間のネットサーフィン等 暗い部屋で見ないこと.

作業時間等

一連続作業時間は1時間を超えないようにすること.
作業休止時間  連続作業と連続作業の間に10~15分の作業休止時間を設けること.
小休止 一連続作業時間内において1~2回程度の小休止を設けること.

作業姿勢

細かい字を覗き込む姿勢を長時間続けると,突き出した頭が前に倒れないように,常に収縮して筋疲労を起こし,血流が悪くなり,肩こりや筋緊張性頭痛を引き起こします.
フォントは大きめに設定しましょう.
また,スマホを固定するために腕や手指にも負担がかかっています.机の前に座り,スマホの保持が容易であることを確認します.電車内などでやむを得ず使用する場合は肘を固定して,目線が下を向きすぎないよう注意して下さい.(画面が電車ごと揺れるので車内での閲覧はなるべく控えること.)

ストレートネックの人はスマホ症候群になりやすい

スマートフォンなどの小さい画面を見て指先で細かい作業を続けるためには首を前に突き出して、頭から腕までしっかりと固定しなければならず、クビの前側にある筋肉(特に斜角筋)が過緊張を強いられます.クビの前側の筋肉は背中側の僧帽筋などと異なり,小さく,筋肉も腱の様に硬く伸びにくいため,動く範囲は狭いものの強力にクビを前に引き寄せます.スマホを長時間下を向いた姿勢で使用すると,過緊張で筋肉が硬直し,さらに硬くなっていきます.この筋肉が短縮したまま不可逆性に拘縮すると、生理的な弯曲が失われていきます.
特に若い女性はクビの筋力が弱いため,特にストレートネックの方は,スマホ症候群になりやすいといえます.

正しい座り方

デスクワーク,特にVDTでの作業は肩こりの一因となっています.肩こり腰痛を起こしにくい座り方をすることが,ストレートネックの悪化を防止し,肩こり・スマホ症候群を予防することにも有効です.

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