稲毛整形外科千葉スポーツクリニックではスポーツ障害の予防,教育にも力を入れております.頚髄損傷を予防することはできませんが,頚髄損傷に直結する飛び込み事故やタックル時のフォーム修正など,知識をもっているだけで事故を防げることがたくさんあります.
脊髄損傷(頚髄損傷)について
中学生以下では水泳での飛び込みでプールの底や海底の突起物で頭部を打って首の骨を折る事故が多く見られます.背の低い子供達が水面を斜めから見て,深さを見誤るケースが少なくありません.
高校生以上ではコンタクトスポーツや体操での受傷が多くみられます.学校の授業で行う柔道では初心者同士が組むため,投げられて頭から落下,受傷することがあります.
ラグビーのスクラム,タックルで前頭部を強打,過伸展.体操の後方宙返りで頭部より転落するなどで受傷します.
受傷受傷原因の半数はバイクがらみの交通事故で,高エネルギー外傷における脊椎骨折や脱臼による脊髄損傷です.2005年の福知山線脱線事故による脊髄損傷の受傷者は20人以上とみられています.
脊髄損傷(頚髄)の症状
上位頚椎部の完全横断損傷では,横隔膜呼吸が不可能なため,受傷直後に死亡する場合が多い.中・下位頚椎部の損傷でも四肢麻痺,膀胱直腸障害が起こります.ごく軽いものでは全身に電気が走っただけで,回復する場合がありますが,必ず専門医の診察が必要です.
脊髄損傷(頚髄)の原因と病態
頚髄損傷の受傷原因は交通事故45%,高所転落30%,転倒15%についでスポーツ外傷5%です.20歳代と50歳代にピークがあり,若年者はバイクでの交通事故,水泳や海水浴時の飛び込みなど,老人では転倒による過伸展損傷が多く見られます.
頚髄損傷は頚椎損傷(骨折,脱臼,椎間板損傷)に伴い,脊髄神経がちぎれたり,圧迫されたりして,障害(運動麻痺,感覚麻痺など)を起こすものです.完全損傷に対し,不完全損傷は中心性損傷(下肢より回復),中心性脊髄損傷,前部損傷(痛覚・温覚脱出・触覚残存),brown-sequard症候群(脊髄半側傷害)などに分けられます.
脊髄損傷(頚髄)の診断と治療
神経症状が片側上肢のみであれば神経根損傷,両側であれば脊髄損傷の可能性があります. 完全麻痺にみえても殿部に知覚が残存しているものはsacral sparingといい,不全麻痺です.
神経症状がなく,骨傷の認められないもの,単純な骨折で関節突起や後部靭帯が健在であれば安定損傷であり,おおむね保存療法が適応.頚椎粉砕骨折や脱臼がある場合は不安定損傷で,不用意に頸椎を動かすと脊髄に二次損傷を与えるので,頭蓋直達牽引のままで専門施設に移送します.
サッカーやラグビーなどで頭を打って倒れた場合など,頚椎にも損傷の可能性のある場合は,不用意に少人数で動かして,頚椎を過伸展することのないように注意してください.