疲労骨折はスポーツの現場,特に中学,高校レベルでの学校スポーツでは,比較的頻繁に目にします.体力差,運動能力差のある部員を同一メニューでこなすことから,ついていけない子供達が疲労骨折を起こしています.
ハイレベルで争う学校では,部員の1/3が痛みを訴えるようなメニューを課しているスポーツ指導者も見受けられます.その過酷なメニューをこなしてこそ,ハイレベルを保っているのでしょうが・・・
疲労骨折の原因と病態
疲労骨折とは,正常な骨に軽微な外力が繰り返し加わって正常な強度の骨に発生する微細骨折であり,外傷で発生する骨折とは少し趣が異なる.加齢,長期臥床,閉経などにより,骨の強度が減少した状態において,軽微な外力により骨折した場合は,脆弱性骨折と呼ばれ,疲労骨折とは区別される.
疲労骨折の発生要因を考えるときは,オーバーユースによる外的因子と解剖学的要因である内的因子に分けて考える.疲労骨折の外的因子として使い過ぎ以外に,加齢,スポーツレベル,グラウンドの硬さ,シューズ,下肢のマルアライメントなどが考えられる.一方内的因子としては,下肢のマルアライメントであるである回内足,扁平足,変形などにより,下腿や足部の疲労骨折が生じるとされている.
疲労骨折の診断
ケガとは関係なく,過度にランニングやトレーニングをした後から,次第に局所の疼痛や腫脹,圧痛,硬結などが出現してくることで発症することが多い.運動時や運動後に疼痛を訴え,安静により疼痛が軽快することが特徴である.次第に疼痛は安静時にも自覚され,部位によっては放散痛を認める.一般的に夜間痛は少ないが,脛骨中央部の跳躍型疲労骨折では疼痛が強く,夜間痛をきたすことがある.
また,疲労骨折部位を支点にして負荷をかける検出テストも有効な例がある.スポーツ歴や練習状況などを聞けば容易に疲労骨折を疑うことができるが,確定診断はX線上に圧痛部位に一致した骨折線や骨吸収,骨膜反応としての骨膜肥厚,反応性骨硬化像などが見られることによってなされる.しかし,X線所見が症状発現から1~2週遅れて見られるため,早期診断として骨シンチグラフィやMRIなどが用いられる.
疲労骨折の治療
一般的に治療は手術やギプスなどの外固定を必要とせず,運動量を厳しく制限し,日常生活動作のみを許して経過をみることが主体となる.少しずつ症状が軽快し,2~4週で症状がほぼ消失してから,やや遅れてX線状の骨癒合も完成する.プレーに復帰するには,選手にどの程度の運動と運動量が可能か,よく話をして納得させ,身体と精神面でのコントロールをする必要がある.
疲労骨折の中には,解剖学的な特性と種目特異性により難治性といわれるものや,治療中であるにもかかわらず,早期に運動を開始したために外傷性の骨折にいたってしまう例がある.脛骨上位型と中位型,脛骨内果,中足骨幹部などの疲労骨折が外傷性骨折になりやすく,また脛骨中位の跳躍型,弟5中足骨のいわゆるJones骨折,足舟状骨骨折などは難治性といわれ,骨癒合が長期となり,必要に応じて手術が行われる.
疲労骨折の予防
発生原因は主にオーバートレーニングである.中でも,下肢のアライメントの悪い選手に起こることが多く,さらに,肥満,筋力低下,関節および筋肉の柔軟性の欠如などが問題点として挙げられる.
予防は筋力トレーニング,ストレッチング,適切な運動量,ランニングフォームの矯正,足底アーチサポートの装着,疲労骨折に対する知識などであり,繰り返しによる過度のトレーニングを可能な限り避けるべきである.疲労骨折の多くのパターンを覚え,的確にこれらの治療に当たる必要がある.現場では,選手の外傷によらない痛みを見逃すことなく判断し,疲労骨折を疑った場合はすぐに医療機関を受診させ,正しい診断をすべきである.そして,スポーツ現場に正しい知識を伝え,トレーニングの工夫をチーム,個人に行い,予防すべきである.(理学療法士 山本)