肩鎖関節脱臼|手術治療

肩鎖関節脱臼肩から落下して鎖骨が折れて飛び出してる

という患者さんには,まず,肩関節を覆っている骨は肩甲骨で,肩甲骨と鎖骨の継ぎ目,いわゆる肩鎖関節というところの靭帯が切れて,脱臼しているということの説明から始めます.

右写真の黄矢印のところが肩鎖関節で,通常は同じ高さにあるのですが,鎖骨が筋肉に引っ張られて上のほうに転位しており,そこが飛び出したように見えるのです.

脱臼の程度により,痛み方も様々ですが,通常は2,3週間で痛みが取れるので,急性期の鎮痛処置だけで治療は終わりますが,跳ね上がった鎖骨端の外観上の変形は残ってしまいます.

この変形を治そうとすると,手術が必要になるのですが,いまだにいい手術法がなく,日本骨折治療学会のホームページでも ”各医療機関の得意な方法で手術をしています。各医療機関にて詳しい説明を受けて下さい。” とあります.

いい手術法,いわゆるgolden standard(標準)といわれる方法がないのはなにをやってもいい悪いは別にして結果(予後)は現段階では同じということだと思います.

 

暑中お見舞い申し上げます

千葉の花火
暑い日が続いています.
ビールのおいしい季節ですが,利尿作用があるので脱水傾向になる人が多く,痛風発作が多くなります.
また,夜間足がつりやすくなるのも脱水(汗をかくことでミネラル分が失われている)が関係しています.
夜間も水分補給を忘れずに,暑い夜を乗り切りましょう.

腰椎横突起骨折|ネイマール

ネイマール|腰椎骨折

サッカーワールドカップもベスト4が出揃い、開催国で優勝候補のブラジルも順当に勝ち進んできました。そのブラジル代表のエース、ネイマール選手が4日行われたコロンビアとの準々決勝で相手ディフェンダーのスニガ選手の背後からの膝蹴りを受けて腰椎を骨折。

背中から落ちて腰の痛みが続く場合は腰椎横突起骨折をまず疑いますが、胸でトラップして背中をそらせた時に背後から膝蹴りされ,腰椎に過屈曲方向の力がかかっていれば腰椎椎体骨折(チャンス骨折)を起こしていた可能性も十分ありました。当初、ネイマールが腰椎骨折で全治1カ月との情報だけでしたが、腰椎椎体骨折では全治2カ月は必須なので、腰の怪我で全治1カ月なら軽傷の部類に入ります。

内田篤人も2008年に飛び蹴りされて第3腰椎右横突起を骨折しており、サッカーに限らず、コンタクトスポーツでは比較的多く見られる骨折ですが、動作時の腰痛だけですむことも多く、受診するまで骨折していると思わず、プレーしている患者さんがほとんどです。

腰椎横突起はその名の通り、太い腰の骨の横にちょこっとついている鉛筆の太さぐらいの長さ2cmぐらいの突起状の骨で、肋骨が退化したものと言われています。腰のインナーマッスルがこの部位に付着していますが、交通事故などの高エネルギー外傷でなければ、大きくずれることはなく、受傷直後は出血と腫れによる痛みが続きますが、痛みのない範囲で日常生活は許可し、通常は4週間前後からスポーツを許可します。

ネイマールのケースでも痛みのコントロールができれば比較的早期に復帰可能なのではと思います。

腰椎分離症|2週間以上続く腰痛

腰椎分離症

前回,小学校高学年で発症した腰椎分離症はコルセットの着用と運動禁止で骨癒合率90%と記しました.
いわゆる治癒とみなされる状態になるので,小学生や中学生でごく初期の分離症と診断できる場合は強くこの治療(安静療法)を勧めています.
しかし,中高生になると骨癒合率は徐々に低下し,進行期になると60%,終末期では骨癒合率はほぼ0%とレントゲン上の治癒は望めなくなってきます.
他部位の骨折や疲労骨折は100%の骨癒合が目標なので,ギプス固定や手術など方法は違いますが,治療法は確立しており,患者さんには骨がつかない可能性や手術の危険性を説明することがインフォームドコンセントですが,腰椎分離症の場合は違います.
患者さんとその家族には治療方針について,運動禁止とコルセットの常時着用4-6か月で骨癒合が見込める可能性が何パーセントあるかを説明して治療法を選択してもらいます.
たとえば中学2年生の腰椎分離症(進行期)でこのぐらいレントゲンではっきりしていると完全に骨がつく可能性は60%ですが,運動禁止してコルセット作りましょうか?
と聞くと,ほとんどの患者さんは迷います.6月ですとほとんどのスポーツ種目で夏の大会に向けた予選が始まるころで,よほど痛がっていなければスポーツ継続を希望します.これがシーズンオフになると治療を希望するケースが増えてきます.
大事な中学3年間のうちの半年を治療に費やすのですから骨癒合率90%であれば強く勧められるのですが,60%ですから,これは仕方のないことかもしれません.このような悲劇を防ぐためには超早期に分離症を診断して骨癒合率90%のうちに治療を始め,やはり完全治癒をめざしたいと思っています.
分離症をおこすかどうかは問診,触診でわかります.医師の経験によるところも大きいと思いますが,これは分離症になりそうだというケースでは1-2週間の運動禁止だけでなおる場合も少なくないと思います(放置していれば分離症になっているかどうかはわかりませんが,)
2週間以上続く腰痛があれば,スポーツ整形外科を早めに受診していただければと思います.早期にMRIで診断できれば安静期間も短くてすむはずです.

腰椎分離症|成長期の子供の腰痛

腰椎分離症

成長期の子供の腰痛で,代表的な腰椎分離症の発生率は5%と,比較的多く,1クラスに2,3人はいる計算になります.
特に,激しいスポーツを行う中学生によくみられ,野球やテニス,バレーボールなどでは利き腕の反対側の腰椎分離症がおおく,原因は主に捻りの動作による疲労骨折と考えられています.一夫バスケットボールやサッカーでは特に左右差はなく,その活動量と体幹の柔軟性も関係しています.
私が医学生として整形外科を学んだ30年前は先天性と教えられており,痛みのない範囲でスポーツ活動を許可するように指導していました.今考えると,終末期の何mmも離れてしまった分離部を見て,先天性という説に落ち着いていたのだと思います.
大学の医局を出るころには,腰椎分離症は疲労骨折というコンセンサスが出来上がっており,その進行度に応じて,分離症初期では分離部の骨癒合,いわゆる完全治癒をめざして,半年間の硬性コルセット着用と運動禁止を行うことになってきました.
小学校高学年で発症した腰椎分離症はこの治療法で骨癒合率90%とかなり治癒率が高いのですが,小学生で分離症をおこす子供はスポーツに熱心なご両親が非常に多く,子供を説得する以上に,ご両親の理解を得るのが大切になります.