骨萎縮の回復は半年以上|稲毛整形外科

踵骨骨折は、高所からの転落や交通事故などによって踵骨に強い衝撃が加わることで起こる骨折です。踵骨は海綿骨でできているため、骨折後に免荷歩行を長期間行うと骨萎縮が生じやすくなります。

骨萎縮は、不動や低栄養などによって骨の吸収が骨の形成を上回る状態になると起こります。骨萎縮が進行すると、長時間歩行後の痛みが残ったり、再骨折のリスクが高まります。骨萎縮の回復には、適切な運動や栄養摂取が必要です。運動は、筋力を向上させ、骨への刺激を与えることで、骨の形成を促進します。栄養摂取は、カルシウムやビタミンDなどの骨に必要な成分を補給することで、骨の吸収を抑制します。

踵骨骨折一か月後のレントゲン
踵骨骨折半年後のレントゲン

この患者さんは踵骨骨折で松葉免荷歩行を二カ月以上要したため、骨萎縮を生じてしまいました。その後徐々に体重をかけ始め、骨折後半年以上かかって骨萎縮が回復しました。

レントゲンで見ると一カ月目で真っ黒に抜けていた右下の踵骨骨端部が半年後には白くなり骨梁が回復して周囲と同じ白い色調に回復しているのがわかります。

この間に理学療法を受けて、関節可動域や筋力の強化、固有感覚の訓練などを行いました。踵骨骨折は予後が不良になりやすいため、早期に適切な治療とリハビリテーションが必要です。

野球肩と野球肘の関係|稲毛整形外科

野球肩と野球肘の関係について

野球肩と野球肘は、投球動作によって引き起こされる上肢の障害です。野球肩は、肩関節の軟骨や靭帯が炎症や損傷を受けることで、痛みや可動域の制限を引き起こす状態です。野球肘は、肘関節の内側にある尺骨側副靭帯が炎症や断裂を起こすことで、痛みや腫れ、しびれなどの症状を引き起こす状態です。野球肩と野球肘は、それぞれ別の部位の障害ですが、実は密接な関係があります。

投球動作は、上腕骨と前腕骨の間の角度(肘屈曲角)と、上腕骨と胴体の間の角度(肩外旋角)によって特徴づけられます。投球動作は、一般に以下の4つのフェーズに分けられます。

  1. ワインドアップフェーズ:投手が足を上げて体重を後ろに移動させるフェーズです。このフェーズでは、肘屈曲角は約90度、肩外旋角は約0度です。
  2. コッキングフェーズ:投手が腕を振り上げてボールを後ろに引くフェーズです。このフェーズでは、肘屈曲角は約90度から120度、肩外旋角は約90度から180度まで増加します。
  3. アクセラレーションフェーズ:投手が腕を振り下ろしてボールを投げるフェーズです。このフェーズでは、肘屈曲角は約120度から20度まで減少し、肩外旋角は約180度から0度まで減少します。
  4. ディセラレーションフェーズ:投手が腕を振り切ってフォロースルーするフェーズです。このフェーズでは、肘屈曲角は約20度から0度まで減少し、肩外旋角は約0度から-90度まで減少します。

このように、投球動作は、肘屈曲角と肩外旋角が同期して変化する複雑な運動です。しかし、この同期が乱れると、野球肩や野球肘の原因となります。例えば、コッキングフェーズで肘屈曲角が過度に大きくなると、肩外旋角が不足し、肩関節に過剰な負荷がかかります。これが野球肩の一つの原因です。逆に、アクセラレーションフェーズで肘屈曲角が過度に小さくなると、肩外旋角が過剰になり、肘関節に過剰な負荷がかかります。これが野球肘の一つの原因です。

したがって、野球肩と野球肘の予防や治療には、投球動作の分析や改善が重要です。

これらのフェーズの中で、特にアクセラレーションとディセラレーションが野球肩と野球肘の原因となります。アクセラレーションでは、肩関節にかかる内旋トルクが最大になります。これによって、肩関節の前方にある軟骨や靭帯が摩耗や断裂する可能性があります。また、肘関節にかかる屈曲トルクも最大になります。これによって、肘関節の内側にある尺骨側副靭帯が伸展や断裂する可能性があります。ディセラレーションでは、肩関節にかかる外旋トルクが最大になります。これによって、肩関節の後方にある軟骨や靭帯が圧迫や損傷する可能性があります。また、肘関節にかかる伸展トルクも最大になります。これによって、肘関節の外側にある橈骨側副靭帯が圧迫や損傷する可能性があります。

野球肩や野球肘を予防するには、正しい投球フォームを身につけることや、ウォーミングアップやストレッチングをしっかり行うことが大切です。

夏期休業のお知らせ 2023/8

2023/8/10(木)から2023/8/15(火)まで休診とさせていただきます.
2023/8/16水曜日より通常診療とさせていただきます.

毎週木曜日と土曜日午後、日曜日は休診日となっております。

昨年より引き続き新型コロナ対策としてマスク着用をお願いしております。発熱をともなう患者様は通常診療終了後に診察しておりますのであらかじめお電話にてご相談ください。
ご協力のほどよろしくお願いいたします.

少年サッカーのヘディングについて

少年サッカーのヘディングについて

サッカーでは、ヘディングという技術があります。ヘディングとは、頭でボールを扱うことです。ヘディングは、ゴールを決めたり、守備をしたりするときに重要な技術ですが、同時に危険な技術でもあります。なぜなら、ヘディングをするときに、頭に強い衝撃が加わることで、脳にダメージを与える可能性があるからです。

脳は、頭の中にある柔らかい臓器です。脳は、私たちの思考や感情、運動や感覚などの機能を司っています。しかし、脳は外部からの衝撃に弱く、頭を強く打つと脳が揺れてしまいます。これを脳震盪といいます。脳震盪は、頭痛やめまい、吐き気などの症状を引き起こすことがあります。また、重度の場合は、記憶障害や意識障害、さらには死亡に至ることもあります。

サッカーでヘディングをするときにも、脳震盪のリスクがあります。特に子どもの場合は、大人よりも首の筋力が弱く、ボールの衝撃を吸収する能力が低いため、より危険です。また、子どもの脳は発達途中であり、繰り返しの衝撃によって成長に影響を及ぼす可能性もあります。例えば、イギリスでは2019年に行われた研究で、元プロサッカー選手は一般人よりも認知症などの病気にかかる割合が3倍以上高いことが報告されました。

そこで、日本サッカー協会(JFA)は2021年4月に、「育成年代でのヘディング習得のためのガイドライン(幼児期~U-15)」を発表しました。このガイドラインでは、「危ないからヘディングを禁止するのではなく、正しく恐れ、適切な方法でヘディングの習得を目指す」という方針を示し、育成年代でのヘディング習得のためのガイドラインとなっています。

  • 幼児期(6歳以下)では、ヘディングは行わないことが望ましいです。ボールとの触れ合いや基本的な運動能力の向上に重点を置きましょう。
  • U-9(7~8歳)では、ヘディングは軽いボールやバルーンなどで行うことができます。頭部の正しい使い方や姿勢などの基礎を身につけましょう。ヘディングの回数は週に1回程度に抑えましょう。
  • U-12(9~11歳)では、ヘディングは通常のサッカーボールで行うことができますが、強度や回数は低く保ちましょう。ヘディングの技術や戦術を学びましょう。ヘディングの回数は週に2回程度に抑えましょう。
  • U-15(12~14歳)では、ヘディングは通常のサッカーボールで行うことができますが、強度や回数は適切に調整しましょう。ヘディングの技術や戦術を磨きましょう。ヘディングの回数は週に3回程度に抑えましょう。

以上のガイドラインはあくまで目安です。個人差や環境差などによって変わる場合があります。育成年代でのヘディング習得にあたっては、常に安全性を考慮し、指導者や保護者が適切な判断と指導を行うことが必要です。

骨挫傷とは

 最近ニュースでも見かける”骨挫傷”.病名にしていいのかどうかわかりませんが,骨の打撲のひどいものを骨挫傷と呼んでいます.

20年前MRIが一般的に普及し,筋肉や靭帯などの軟部組織の診断に用いられるようになり,骨の中の状態もわかるようになりました.そのなかで特定の撮影方法で腫れているところ(水分のおおいところ)だけを強調してみてみると靭帯損傷を起こすほどの外力を受けた患部は,骨の中も出血したり浮腫んだりしている様子が画像化されるようになったのです.

図は右膝を正面から見た内側側副靭帯損傷(黄矢印)のMRI画像です.外側(緑矢印のあるほう)から,タックルされ受傷しました,

強い力が外側からかかり,内側の側副靭帯が引き伸ばされて切れるわけですが,てこの支点となる外側の関節も,せん断力(すいか割りの原理)により,骨の内部にダメージを受けます.

単なる打撲でも2週間以上痛みが続く場合は,骨挫傷を疑う必要があります.