こどもの肘関節周辺部の骨折は要注意! 肘骨折は、特に活動的な子どもに多く見られるけがの一つです。その中でもよくあるのが上腕骨顆上骨折で、これは3~8歳の子どもたちに頻繁に発生します。この骨折は、転倒や転落時に手をついて肘を伸ばした際に受ける衝撃が原因となります。
一方、肘がはずれるという状態は0~3歳の子どもたちに起こる症状で、子どもの手を強く引っ張ったり、転んで手をついた時に発生します。多くの場合肘内障(ちゅうないしょう)に該当します。
上腕骨顆上骨折

上腕骨顆上骨折は、主に転倒や落下などによる外力が肘関節に加わることで発生します。この際、特に手を伸ばした状態で地面に手をついて受ける衝撃が原因となることが多いです。
この骨折には、以下のような代表的な受傷メカニズムが見られます:
- 遊具(鉄棒や滑り台)からの転落。
- 高所からの落下時に反射的に手をつく。
- スポーツ活動中の接触や転倒。
また、上腕骨の顆上部分は解剖学的に脆弱なため、肘が過伸展した際に損傷しやすい構造となっています。その結果、肘関節の屈伸運動や回旋運動に影響を及ぼすこともあります。
症状:
上腕骨顆上骨折の主な症状としては以下のようなものが挙げられます:
- 痛みと腫れ: 肘関節周辺に強い痛みと目立つ腫れが生じます。
- 可動域の制限: 肘を曲げたり伸ばしたりすることが難しくなります。動かそうとすると強い不快感がある。
- 皮下出血: 肘の周りにアザや内出血が見られることもあります。皮膚の変色や内出血が起こる場合もある。
- 変形: 骨がズレた場合、肘の形状に異常が現れる場合があります。
- 神経や血管の影響: 深刻な場合、手や指に痺れや冷感が生じたり、脈が弱くなったりすることもあります。
骨折が疑われる場合は、腫れを悪化させないために冷却と安静を保ち、速やかに医療機関を受診することが重要です。
治療:
上腕骨顆上骨折の治療には、骨折の程度や患者の状況に応じて保存的治療と手術的治療が選択されます。
保存的治療
- ギプス固定: 骨のずれが軽度の場合、ギプスや半ギプス固定を3~4週間行います。
- シーネ固定: 転位のない骨折に対し、半ギプス固定を行い、2~3週間の安静が求められます。
- 軽度の骨折に適しており、自然な治癒を促す方法です。
手術的治療
- 経皮的ピンニング: 骨を整復し、ピンを使用して固定する方法。全身麻酔を伴います。
- 観血的整復固定術: 皮膚を切開し骨の位置を戻し、鋼線で固定します。
- 重度の骨折や血管・神経の損傷がある場合に適用されます。
リハビリ
- 骨癒合後、段階的に肘の可動域を回復させるリハビリを行うことが重要です。
- 初期は軽い運動から始め、筋力強化や日常生活動作を目指します。
医師の適切な診断と治療のもとで、適切な処置が行われれば良好な回復が期待できます。子どもが肘を痛めてしまった際は、早めに整形外科専門医を受診するのがおすすめです。迅速な対応が予後に良い影響を与えることが多いです。
上腕骨顆上骨折に伴う重篤な後遺症として、以下のような可能性があります。
重大な合併症の種類と影響
- フォルクマン拘縮: 前腕筋群の拘縮で、手指の変形や神経麻痺を引き起こします。適切な治療が遅れると、筋肉の壊死が進む可能性があります。
- 神経損傷: 骨片が神経を圧迫することで手指の痺れや運動障害を引き起こす場合があります。
- 血管損傷: 特に転位骨折では血流障害が起こることがあり、チアノーゼや循環不良の症状が見られることがあります。
形態的な問題
- 肘の変形: 骨折部の整復が不十分である場合、内反変形(肘部管が狭くなる)や外反変形(肘が伸展しすぎる)といった問題が生じる可能性があります。
- 癒合不全: 骨が正常に癒合せず、日常生活における制限を伴うことがあります。
こうした後遺症を防ぐには、早期の治療と適切なリハビリが重要です。
肘内障
こどもの肘骨折の症状は,重度であれば肘周辺部の痛みや腫れ,変形がありますが,軽度の場合は,転んでから手を動かさない,手を使いたがらない,手がダラッとしているなど,痛み以外の症状が唯一のサインである場合が少なくありません.
肘内障の病態は、肘関節の中でも特に橈骨頭(とうこつとう)が輪状靭帯(りんじょうじんたい)から外れかかることで発生します。この状態は亜脱臼と呼ばれ、完全な脱臼とは異なり、関節が部分的に外れている状況です。小さな子どもの肘周りの骨や靭帯はまだ未熟で柔軟性が高いため、このような現象が起こりやすいとされています。
症状:
典型的な肘内障の受傷は、手を強く引っ張られることや、急な外力によって引き起こされます。
- 症状としては、肘をやや曲げた状態で腕を垂らしたまま動かさないことが一般的です。自分では肘を曲げたり伸ばすことができなくなりなくなります。物も握ろうとしません。
- 腫れや内出血は通常見られませんが、動かそうとすると痛みを訴える場合があります。
- 痛みによって泣き続けたり、腕を使うことを避ける行動が見られることがあります。
治療
徒手整復(としゅせいふく)
外れた橈骨頭(とうこつとう)を正しい位置に戻すため、医師が直接手を使って、前腕を内側に回転させながら整復します。クリック音とともに腕を動かすようになれば大丈夫ですが、まだ痛がるようであれば骨折や完全脱臼の場合もあり、深追いは禁物です。
整復が成功した場合、通常は固定を行う必要はありません。再発を防ぐため、保護者に対して肘に過度な力をかけないよう指導が行われます。
前述の如く、痛みを訴えない場合でも、骨折していることがあり、こどものひじのケガは整形外科を受診してしてください。特に乳幼児の場合は、手を動かさない、手を使いたがらない、手がダラッとしているなど、痛み以外の症状が唯一のサインである場合が少なくありません。