肘内側側副靭帯損傷

肘内側側副靭帯損傷(尺側側副靭帯損傷)

尺側側副靭帯損傷

肘内側側副靭帯損傷(尺側側副靭帯損傷)は成人の野球肘の原因となるだけでなく,肘を伸ばして転倒したときや柔道などの固め技やアームレスリングでも断裂する,肘の外傷で最も多い靭帯損傷です.

肘内側側副靭帯損傷(尺側側副靭帯損傷)の症状

投球動作や柔道の背負い投げのような肘の内側にストレスをかける動作時の肘の内側の痛みが主症状.外傷性尺側側副靭帯損傷では不安定性が問題となることが多く見られます.

肘内側側副靭帯損傷(尺側側副靭帯損傷)の原因と病態

肘関節は蝶番関節といわれ,ちょうつがいのように一方向にだけ曲げ伸ばしができるように,運動が制限されている関節です.関節が横方向に曲がらないように,関節の外側と内側にあり,横方向のブレを制限している靭帯を側副靭帯と呼びます.(図参照)
肘関節は少し外側に曲がっており(外反),このことが,手を突いた際,外側に曲がろうとして肘内側の尺側側副靭帯損傷が断裂する原因です.また投球動作では,オーバーヘッドスローイング(特にカーブ)による繰り返される尺側側副靭帯損傷への外反ストレスが,尺側側副靭帯損傷を起こすと考えられます.

肘内側側副靭帯損傷(尺側側副靭帯損傷)の診断と治療

投球時,肘の内側が痛む場合は,肘尺側側副靭帯損傷(内側側副靭帯損傷)が疑われます.スポーツ整形外科でのMRI検査が必要です.日常生活には支障ないものの,競技レベルのスポーツは困難となるため,競技を続けるには手術が必要なことがあります.
外傷による肘内側側副靭帯損傷(尺側側副靭帯損傷)は軽度から中等度の損傷であれば,テーピングや短期間のギプス固定で,3-4週間で回復します.野球肘による尺側側副靭帯損傷はその程度により,靭帯再建術が必要になることもあります.
適切な治療を受けないと、競技生活を引退しても関節の老化現象(変形性肘関節症)により,肘の可動域が低下したり,尺骨神経遅発性麻痺を起こし,日常生活にも支障をきたすことがあります.