足根洞症候群(そっこんどうしょうこうぐん)は、足首の外側にある「足根洞」と呼ばれる溝状のスペースに炎症や痛みが生じ、足首の不安定感を引き起こす病態です。この部位は、踵骨(かかとの骨)と距骨(足首の骨)の間に位置し、靭帯や神経、感覚受容器が集中しています。
主な原因
- 足首の捻挫:特に繰り返し起こる捻挫が足根洞に過度な負担をかけ、靭帯や組織を損傷する。
- 適切な治療の欠如:捻挫や怪我の後、治療をせずに放置した場合、後遺症として発症しやすくなります。
- 扁平足や足のアライメント異常:足底の形状が正常でない場合、足根洞に不均一な負荷がかかり、症状を引き起こす可能性があります。
- 過度な負荷:長時間の立ち仕事や歩行、ハイヒールの着用が原因で足首に過剰なストレスがかかる。
- 慢性的な炎症:特に関節リウマチや糖尿病といった基礎疾患が炎症を助長する場合があります[9]。これらの原因が、足根洞に繰り返しダメージを与えることで発症リスクが高まります。
症状
足根洞症候群の症状は以下のようなものです:
- 外くるぶしの前方を押すと痛む:触るだけで痛みを感じる部位があります。
- 不安定感:特に不整地を歩いたり足首を内側にひねるときに感じる。
- 腫れや炎症:足根洞の周辺が腫れることがあります。
- 歩行時の違和感:平坦でない地面を歩く際の痛みが強くなる。
- 足首の可動域の制限:動かしづらさを感じることも。
これらは足首捻挫後に続発することが多い。
診断と治療
足根洞症候群の診断には以下の方法が活用されます:
1. 問診と視診
患者の病歴や怪我の状況、痛む部位を詳しく確認します。
2. 身体検査
- 足根洞の周囲を押して痛みが誘発されるかを評価。
- 足首の動きに伴う痛みや硬さも検討します。
3. 画像検査
- レントゲン:骨の異常や距骨と踵骨の位置関係を確認します。
- MRI:筋膜や靭帯の損傷、炎症を詳細に見るために非常に有効です。
- CT:骨密度や骨の状態を精密に調べるための検査。
- 超音波検査:軟部組織や炎症の程度の評価に使われます。
4. 神経学的検査
神経障害の有無を調べ、痛みや不安定感の原因を究明します。
足根洞を通る主な神経は、以下の通りです:
- 後脛骨神経(こうけいこつしんけい) 坐骨神経から分岐し、足底全体へ感覚や運動指令を送る大切な役割を果たしています。足根洞近辺で他の構造と接触して影響を受けることがあります。
- 外側足底神経(がいそくそくていしんけい) 後脛骨神経の分枝で、足底の筋肉や組織を支配。外側足底の動きや感覚に関係しています。外側足底神経が麻痺すると、足の外側部分や第4趾と小趾(5番目の指)の感覚が鈍くなったり、失われることがあります。また、以下のような症状が見られることもあります:
- 筋力の低下:外側足底神経が支配する筋肉(例: 小趾外転筋や足底骨間筋)が弱り、足底部の力が入りにくくなる。
- 足趾の動きが制限:特に小趾(足の外側)の動きが鈍くなる可能性があります。
- バランスの低下:足の外側部が地面に対する感覚を伝えにくくなるため、安定した姿勢を保つのが難しくなる場合も。
これらの神経は、足根洞内で他の組織や靭帯と隣接しているため、足根洞症候群などの状態で圧迫されることがあります。
治療
足根洞症候群の治療は、保存療法と手術療法の2つに分けられます。
保存療法
- 安静と冷却
- 足首を使いすぎないようにし、氷で冷やして炎症を抑えます。
- サポーターやインソールの使用
- サポーターや特別なインソールで足の動きを安定させ、負担を軽減します。
- テーピング
- 症状を和らげるため、専用のテーピングを足首に施します。
- 薬物療法
- 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や局所麻酔剤の注射が炎症を緩和します。
- 理学療法
- 足首を強化し、柔軟性を高めるエクササイズを行います。
手術療法
- 保存療法が効果を示さない場合、足根洞の組織や瘢痕を除去する手術が行われます。術後は、足を支えるリハビリを行い、徐々に負荷をかけていきます。
適切な治療を早期に受けることで、症状の改善が期待できます。足首の怪我の後、症状が続く場合には早期の受診が大切です!