アキレス腱断裂

アキレス腱断裂

アキレス腱断裂のMRI画像

アキレス腱断裂は,今日まで治療方法に関する統一見解がなく,保存療法と様々な手術方法として切開縫合や経皮縫合が行われています.
昔から,アキレス腱断裂は手術した方がいいという一般常識に対して,最近の画像診断(MRI,超音波エコー)の進歩とさまざまな統計学的手法を使ったリサーチにより,アキレス腱断裂の保存療法の有用性が見直されています.

アキレス腱断裂の原因と病態

アキレス腱断裂は人口10万人に対して5-40人程度の発生率で,近年増加傾向にあります.アキレス腱断裂は30-40代の男性に多く認められ,スポーツ種目ではバドミントン,バレーボール,サッカー,テニスなど球技やラケット使用競技でのレクリエーションスポーツを中心としたスポーツ外傷が原因の約80%を占めています.
受傷機転は,テニスやバトミントンで前にダッシュしたときや,バレーボールでジャンプしたときに受傷します.受傷時の衝撃は,踵を蹴られた!ボールが当たった!感じといいます.
ストレッチング不足が原因と考えられますが,ストレッチを行っていたにもかかわらず断裂する場合もあり,一般的にアキレス腱断裂の基盤には腱の肥厚(変性)が存在すると考えられています.前兆の全くない人もいますが,断裂する前からアキレス腱に張りを感じていた方も見受けられます.

アキレス腱断裂の診断と治療

アキレス腱断裂を疑う際には,特徴的な受傷時のエピソードに加え,局所所見で陥凹の触知や,Thompsonテストが有用で,ほとんどの症例においてその場で診断が可能です.
画像検査として,デジタル映像化処理による単純X線検査CRでもある程度,断裂状況の描出が可能となり,超音波検査,MRIなどによる客観的把握が容易となりました.
治療方法には手術によりアキレス腱を縫合する方法と,ギプスや装具でアキレス腱が自然治癒するまで足関節を固定する保存療法があります.
手術療法と保存療法のいずれにおいても,合併症さえ発生しなければどのような治療方法が行われても長期的に見れば機能的に両群間に有意差はなく良好であるとされています.

アキレス腱断裂の保存療法

アキレス腱断裂の保存療法には,ギプスを8週間巻いて固定するギプス療法と足関節背屈制限装具を用いる装具療法があります. 近年,画像診断の進歩により,装具療法が注目されています.ギプス療法と異なり,経時的な局所所見の観察が可能であり,断裂腱の修復過程の画像解析も容易なため,保存療法中の合併症発生の予防に役立つようになりました.
装具療法における早期運動療法は機能回復面からも有用とされ,下肢筋群の筋力低下を防止でき,治療成績は手術療法例の報告と有意差が見られず,手術合併症もなく,再断裂は0.7-8.3%とされています.

保存療法と手術療法

アキレス腱断裂の保存療法と手術療法は断裂後6ヶ月の時点での筋力測定の結果に有意差はなく,合併症の発現頻度はほぼ同じと考えられています.
筋力低下の回復は短期的には手術療法のほうが優れており,スポーツ選手の場合には手術療法の方がスポーツ復帰は早く,手術による深部感染,腓腹神経損傷,腰椎麻酔合併症がなければ,手術療法を選択するところです.最大の合併症である再断裂率は手術療法で低く,保存療法で高いとされています.
装具療法で再断裂率が高いのは,医師の指示に従わず,自宅で装具をはずしていたり,足に体重をかけたりしてしまうことが考えられます.定期的に通院して超音波などでアキレス腱の修復状況を見ながら,しっかりと自己管理できる方は保存療法もお勧めです.