シンスプリント

シンスプリントと脛骨疲労骨折は鑑別診断にMRIを行うこともあります.

シンスプリントは、運動中にすねの内側、特に脛骨周辺に痛みが生じるスポーツ障害です。主にランニングやジャンプなどの繰り返しによって骨膜に炎症が起こることで発生します。陸上競技やバスケットボール、サッカー選手に特に多く見られる問題ですが、初心者ランナーにも起こりやすいことから「初心者病」と呼ばれることもあります。

シンスプリントの症状

初期の段階:
運動後にすねの内側に違和感や軽い痛みが現れる。
痛みは不定期で、安静にすると緩和される。
進行した段階:
運動中や運動後、さらには安静時にも痛みが続くようになる。
すねの内側が腫れたり、押すと痛みを感じる(圧痛)。
痛みが常態化することで日常生活に影響が出る。
重症化した場合:
疲労骨折に至る可能性があり、治療期間が大幅に長引く。
激しい痛みと共に運動が完全に不可能になることも。

シンスプリントの原因

内的要因

  1. 扁平足: 土踏まずが低いことで、着地時の衝撃を吸収できず、脛骨に負担がかかります。
  2. 筋力不足と柔軟性の低下: ふくらはぎや足部の筋力が弱かったり、柔軟性が低下していると、負荷が集中します。
  3. 不適切なランニングフォーム: 足の内側に過剰なストレスがかかる動きが原因になることがあります。

外的要因

  1. 硬い地面での運動: アスファルトなど硬い路面でのランニングは、足や脛骨への衝撃が大きいです。
  2. 不適切なシューズ: クッション性が低かったり、かかとがすり減ったシューズは足への負担を増やします。
  3. トレーニング過多: 短期間で負荷を急激に増やすと、オーバーユースが引き金となります。

発症メカニズム

シンスプリントの発症メカニズムは、主に脛骨の骨膜が炎症を起こすことにあります。以下が詳しいプロセスです:

  1. 骨膜へのストレス: 脛骨を覆う骨膜に、ひらめ筋や後脛骨筋、長趾屈筋といった筋肉の繰り返しの収縮が引っ張る形で刺激が加わります。この圧力が長時間続くと、骨膜が炎症を起こし始めます。
  2. オーバーユース(過剰使用): ランニングやジャンプなどの高強度の運動が、脛骨にかかる負荷を増大させます。適切な休息が取れず、ダメージの修復が追いつかない場合、炎症が進行します。
  3. 足のアライメント問題: 扁平足や過度な回内足など、足の形状や動きが不適切な場合、脛骨に余計な負担がかかり、炎症リスクが高まります。


シンスプリントと呼ばれるもののほとんどは,脛骨過労性骨膜炎のことで,下腿疲労骨折とは違い,脛骨に沿って起こります.筋肉の引っ張る力が強く,骨(骨膜)からはがされていると考えやすいと思います.病態とししては,足のアーチが崩れることや,着地時に足関節(踵)が内側に過度に倒れこむこと(オーバープロネーション)等により,引き起こされます.

シンスプリントの診断

診断方法

  1. 問診と身体診察:
    • 症状の経過や運動習慣について詳しく話し合います。
    • 疼痛の位置や程度を確認します。
  2. 疼痛誘発検査:
    • 痛みが発生している箇所を押して反応を観察します。
    • 脛骨下部1/3付近に痛みが集中する特徴があります。
  3. 画像診断:
    • X線検査は通常のシンスプリントでは異常が見られないことが多いですが、疲労骨折との鑑別に役立つ場合もあります。
    • MRI検査は慢性的な痛みや疲労骨折との区別をする際に有効です。
  4. 超音波検査:
    • 骨膜の炎症や腫れを確認するために使用されます。

早期の検査と診断が、治療の効果を高める鍵です

シンスプリントの治療と予防

保存治療法では、まず運動の負担を軽減しながら、症状の緩和と回復を目指します。以下が主な選択肢とその効果です:

  1. 安静:
    • 痛みを引き起こす運動を一時的に停止します。
    • 炎症が抑えられ、回復が促進されます。
  2. アイシング:
    • 痛みや腫れを軽減するため、冷却を行います。
    • 効果的な炎症の抑制手段です。
  3. インソールやサポート用品:インソールやアーチサポートを使用して、足底の負担を軽減します
    • 衝撃を吸収し、脚への負担を軽減します。
    • 偏平足や足のアーチ異常に特に有効です。
  4. 理学療法:ストレッチや軽い筋力トレーニングを組み合わせます。
    • 筋肉の柔軟性と強度を改善し、再発を予防します。
    • 痛みが落ち着いた後に、ふくらはぎや足底筋のストレッチ、また筋力トレーニングを行い、負荷に耐えられるよう下肢を強化します[5][6]。
  5. 薬物療法:
    • 痛み止めや抗炎症薬を使用して症状を和らげます。
    • 一時的な痛みの緩和が期待されます。
  6. 体外衝撃波治療:
    • 慢性的な痛みに対して、新しいアプローチとして利用されることがあります

    軽い段階で適切に対応すれば、2〜3週間で改善が見込めますが、放置すると症状が悪化し、長期間の治療が必要になることもあります。運動前後のストレッチやシューズ選びに注意を払うことで予防が可能です。正確な診断と適切なケアが重要なので、痛みが続く場合は整形外科で専門的な診察を受けることをおすすめします。

    新しい治療法

    血管内治療:
    カテーテルを用いて異常な血管を閉塞し、炎症を抑制。
    痛みを軽減し、血流を正常化。低侵襲で即日帰宅可能。
    体外衝撃波療法:
    血流促進と組織再生を促す治療法。副作用なし。
    保存治療の効果が得られない場合に適応。

    シンスプリントの予防

    シンスプリントは足関節(踵)が内側に過度に倒れこまないように,テーピングすることで予防します.

    1. キネシオテープ(幅5cm)をすねの長さにあわせ,35-40cmの長さに切る.角を丸めておく.
    2. 足くびを曲げ,テープの一端を小趾の根元に貼り付ける.足底アーチの一番くぼんでいるところを横切り,甲の高いところから,すねの前面に,テープを巻いていく.
    3. キネシオテープを15cmに切り,足底のアーチを支えるように補強.
    4. 外側を貼ってから,を足くびを内側に傾け,引っ張りながら足のアーチを固定する.