肩腱板損傷とは、肩関節を安定させる役割を持つ腱板と呼ばれる筋膜の一部が断裂する病気です。肩腱板損傷は、高齢者やスポーツ選手に多く見られます。高齢者では、肩関節の変形や腱板の退行性変化により、軽い外力でも断裂しやすくなります。スポーツ選手では、投球やラケットスイングなどの反復的な肩関節の動きにより、腱板に過大な負荷がかかり、炎症や断裂を引き起こします。
稲毛整形外科では、肩腱板損傷の早期発見と治療を行っています。診断は、問診や触診のほか、レントゲンやMRIなどの画像検査で行います。治療は、保存的治療と手術的治療があります。保存的治療では、安静や冷却、消炎鎮痛剤などで症状を和らげます。また、運動器リハビリテーションで肩関節の可動域や筋力を回復させます。
稲毛整形外科では、肩腱板損傷の予防や早期発見にも力を入れています。特にスポーツ選手は、投球数やフォームなどに注意し、定期的に健診を受けることをお勧めします。また、高齢者は、日常生活での肩関節の使い方やストレッチなどで肩関節の健康を保つことが大切です。
肩腱板損傷の症状
肩腱板損傷の症状には、肩の痛みや可動域の制限、力の低下などがあります。手が後ろに回らなくなる、いわゆる四十肩、五十肩と診断され,長い間治らない患者さんの中に腱板断裂が見逃されていることがあります。肩が上がらない、ある角度で痛みがある等、自然軽快しにくく、肩腱板損傷の診断にはMRI検査が有用です。
肩腱板損傷の原因と病態
肩腱板損傷は、スポーツや仕事などで肩に過度な負荷がかかることで起こることが多く、痛みや可動域の制限などの症状を引き起こします。肩関節が十分な機能を発揮するためには肩関節包,腱板,滑液包,三角筋などの軟部組織の協調運動が必要です。したがって肩関節包,腱板,滑液包,三角筋により構成される肩関節の滑走機構のいずれに障害が発生しても肩機能には障害が発生します。
肩腱板損傷とは、肩関節を構成する4つの筋肉(棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋)の腱が炎症や断裂を起こす病気です。肩腱板損傷の原因には、加齢による腱の変性、肩関節の形態異常、過度な負荷や外傷などがあります。腱板に加わる外力も含めた機械的ストレスと退行変性を基盤として損傷します。腱板は若年齢では強度も強く柔軟性に富んでいるが,年齢とともに強度や柔軟性も低下し,退行変性や弱い外力でも断裂し易くなります。
肩腱板損傷の診断と治療
肩腱板損傷の診断は、問診や触診、画像検査(X線、超音波、MRIなど)によって行われます。
- 大結節の圧痛・陥凹・操音の触知
- Drop Arm Sign:腱板断裂があれば必ず陽性になるのではなく,明らかな外傷を伴う腱板断裂の急性期にのみ出現.
- 有痛弧(Painful arc):最大域ではなく外転80°~ 100°での発現頻度が多い.
- 棘上筋と棘下筋の奏縮:患部を露出し,患側だけを視診するのではなく患側と健側間の比較(左右差)をすることが重要。
腱板断裂を示峻する単純X線像
- 骨頭上昇 肩甲骨下縁と上腕骨頚部下縁のラインがきれいに揃わずギャップが生じる。これは腔板の機能が低下し,相対的に三角筋が優位に働き骨頭を上方に引き上げるためで,約1/3に断裂を認めます。
- 肩峰下骨麻と大結節の不整 肩峰下骨棘は腱板を傷つける位置に形成され,約1/3に腱板断裂を認める。
- 骨頭上昇と肩峰下骨棘 1)で説明した骨頭上昇と肩峰下骨麻が合併した場合, 約2/3に腱板断裂を認めます。
- 肩峰骨頭間距離(:AHI) 6 mm以下は88%に腱板断裂を認め,4 mm以下は広範囲断裂を認めます。
肩腱板損傷の治療は、炎症や断裂の程度によって異なりますが、一般的には保存的治療と手術的治療の2つに分けられます。
保存的治療では、安静や冷却、消炎鎮痛剤やステロイド注射などで痛みを和らげるとともに、理学療法や運動療法で筋力や可動域を回復させることが目的です。
手術的治療では、内視鏡下で腱の修復や関節内の清掃などを行うことで、肩関節の機能を改善させることが目的です。肩腱板損傷は、早期に適切な診断と治療を受けることで予後が良くなる可能性が高いです。
肩腱板損傷のリハビリ
肩腱板損傷のリハビリは、損傷の程度や原因によって異なりますが、一般的には以下の3つの段階に分けられます。
第1段階:急性期
この段階では、炎症や出血を抑えるために、冷却や安静、消炎鎮痛剤などの処置が行われます。また、肩関節の可動域を保つために、軽いストレッチングや関節可動域訓練(ROM)などの運動が行われます。この段階では、肩に負担をかける運動は避ける必要があります。
第2段階:亜急性期
この段階では、肩関節の可動域を回復させるために、強度や回数を増やしたストレッチングやROMなどの運動が行われます。また、肩腱板の筋力や耐久力を向上させるために、弾性バンドやウエイトなどを用いた筋力訓練(RT)などの運動が行われます。この段階では、肩に痛みや不快感を感じる運動は避ける必要があります。
第3段階:慢性期
この段階では、日常生活やスポーツなどで必要な肩関節の機能を回復させるために、より高い強度や速度で行うストレッチングやROMなどの運動が行われます。また、より複雑で多方向な動きをする肩腱板の筋力や協調性を向上させるために、プロペリオセプティブニューロマスキュラーファシリテーション(PNF)やバランスボードなどを用いた機能訓練(FT)などの運動が行われます。この段階では、肩に痛みや不快感を感じない範囲で運動することが重要です。
肩腱板損傷のリハビリは、個人差がありますので、医師や理学療法士などの専門家の指導に従って行うことが必要です。また、リハビリは根気と努力が必要ですので、自分のペースで無理せず続けることが大切です。
肩のチューブトレーニング
腱板(cuff)の筋機能を再教育・改善することを主目的とし,肩関節疾患において一般的な訓練となっています. 訓練方法は,徒手やチューブによる軽い抵抗,もしくは無抵抗にて外旋や肩甲骨面上の外転などを行い,,腱板の筋活動を向上させます.強すぎる抵抗は大胸筋や三角筋(Outer muscle)に力が入ってしまい,軽い抵抗に反応する腱板(Inner muscle)の働きを阻害してしまうので注意してください.