突然死

突然死・心不全

近年はスポーツ指導者の医学知識の充実によってかなりの程度まで予防可能な,熱中症,高山病,潜水病などの外因性障害よりも,急性心不全,脳血管障害,過換気症候群,自然気胸などの内因性障害の方がしばしば問題となります.

突然死

突然死の原因は狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患や,不整脈,大動脈瘤破裂などの心疾患が大半を占めますが,脳出血や脳動脈瘤破裂,てんかんや喘息重積発作なども原因となります.運動中では頻度は少ないものの,熱中症なども突然死の原因となります.

急性心不全―心臓性急死

若年者の突然死の原因は,心臓の筋肉に血液を送っている冠状動脈の先天性奇形と肥大型心筋症(スポーツ心臓との鑑別が重要)がかなりの部分を占めており,普段は無症状なため本人も知らず,激しい運動をして発症することが多くなります.外傷でも心停止が起こります.デッドボールで心停止に陥った野球部員がAEDによって一命をとりとめた例があります.
一方,中高年の突然死では。動脈硬化が基礎疾患にあり,血栓が心臓の冠状動脈を塞いで心筋が壊死する,心筋梗塞が圧倒的に多く見られます.
東京マラソン(2009)で、テレビ番組の収録で出走したタレントの松村邦洋さん(41)がコース上で意識を失って倒れ、 一時は心肺停止状態となり,駆け付けた医師が自動体外式除細動器(AED)で呼吸を回復させ、渋谷区内の病院に救急搬送されています.原因は急性心筋梗塞による心室細動との事でした.

応急手当てと損害賠償

災害に遭ったり急病になったりした人などを救うために,応急手当を施し,損害が生じた場合、形式的には不法行為(民法709条)に該当します。しかし,重大な過失が無い限り,無償で善意の行動をとった場合,罪になったり損害賠償をしなければならない事態になる可能性は極めて低いと考えられています.
民法第698条 (緊急事務管理)悪意または重過失がなければ救命手当の実施者が被災者等から責任を問われることはない.

スポーツ心臓

スポーツ心臓は、強度の運動に耐えるために心臓が適応し,一回の拍動で多くの血液が送り出せるように 心臓が肥大した状態で,安静時の心拍数が50以下と環境に適応した,正常の状態とみなされています.
日常の運動が少ない人で,心肥大,極端な徐脈を認める場合は,拡張型心筋症・肥大型心筋症が疑われ,急激な運動に際しては注意しなくてはなりません.
心筋症や不整脈はスポーツ選手にとって突然死の原因となりうるため、問診によるメディカルチェックにとどまらず,精密検査が必要となることがあります.