スポーツの現場では頭部外傷による脳振盪や意識消失発作は比較的多く遭遇するスポーツ障害で,代表的な例としては、脳震盪や急性硬膜下血腫、外傷性髄液漏などがあります.ですが常に脳神経外科医,神経内科医が帯同しているわけではありません.意識消失を伴った場合は,現場で判断せず,専門医に判断を仰ぐ必要があります.
脳震盪
脳震盪とは,頭部への急激な衝撃(外力)によって,脳が急激に揺れる衝撃でおこる脳細胞の損傷で,一時的に運動麻痺やしびれを伴います.意識消失がなく15分以内に症状が軽快するものを軽度,症状がなくなるまで15分以上要したものを中度,数秒でも意識消失があれば重度と判断します.
1回目であれば軽度の脳振盪ではその日の競技復帰を許可.中度の脳振盪は当日の運動禁止.医師の診察を要します.少しでも意識消失があれば,重度と考え,特に2分以上の意識消失が見られた場合は医療機関での精密検査が必要です.
セカンド・インパクト・シンドローム(SIS)(二次的衝撃症候群)
損傷の度合いに関わらず,1度目の脳震盪から短期間に2度目の脳震盪を起こすと致死率は50%以上!「セカンドインパクトシンドローム」といってかなり重篤な状態になることがしられています.各スポーツ団体で運動復帰の目安は異なりますが,日本ラグビー協会では,高校生以下の受傷の場合,3週間.日本ボクシングコミッションは試合終了後2週間を経過しなければ次の試合に出場できず,TKO負けの場合はは45日間の出場停止が規定されています.
急性硬膜下血腫
急性硬膜下血腫は、スポーツ中に頭部に大きな衝撃が加わることで発生する重大な外傷の一種です。この状態では、脳と硬膜の間に血液が急速に溜まり、脳に圧力をかけることで危険な症状を引き起こします。
主な原因
- スポーツ時の頭部への直接的な打撃(例: 柔道やボクシング、ラグビーなどのコンタクトスポーツ)。
- 激しい衝突や転倒による頭部の急激な加速度変化が脳内血管にダメージを与える。
症状
- 強い頭痛、吐き気や嘔吐。
- 意識混濁、記憶障害。
- 手足の麻痺やけいれん発作などが進行する場合もあります。
応急処置と治療
- 早期対応が命を救う:受傷直後は意識清明な場合でも、時間経過後に症状が急速に悪化することがあります。
- 診断:CTスキャンやMRIで血腫の位置と大きさを確認します。
- 治療:緊急手術(血腫除去術)や開頭術が必要なことがあります。
予防策
- ヘルメットの着用や適切な防具を使うことで頭部への衝撃を最小限に抑えます。
- 接触スポーツでは安全なルールを守ることが重要です。
このような外傷は生命を脅かす可能性があるため、頭部への衝撃を軽く見ず、迅速な対応を心がけることが不可欠です。
脳出血
スポーツ中に発生する脳出血は、頭部への強い衝撃が原因で頭蓋内での出血が生じる重大な状態です。特に柔道やボクシングなど、直接的な打撃が頻繁に発生するコンタクトスポーツで起こるリスクが高いです。
原因
- 脳を包む血管や組織が衝撃により損傷を受け、出血を引き起こします。
- 頭部を強打する転倒や衝突が主なきっかけです。
- 脳震盪を繰り返した選手が、軽度の脳損傷を放置してしまい、深刻な脳出血につながることがあります。
症状
- 急な頭痛や意識障害、嘔吐。
- 手足の麻痺や視覚障害。
- 頭蓋内圧の上昇が見られるケースでは、瞳孔の左右差が発生する場合も。
治療と予防
- 治療: 緊急開頭術による血腫の除去が必要になることがあります。
- 予防:
- ヘルメットの着用や防具の適切な使用。
- 衝撃を最小限にするためのルール遵守と安全教育。
この状態は生命に関わる深刻な問題であるため、競技中の頭部への衝撃は軽視してはならないものです。