スポーツ外傷(骨折・脱臼・肉離れ)
スポーツ外傷(骨折・脱臼)は受傷直後の初期治療が予後に大きな影響をもたらすことがあります.打撲・捻挫と思っていても,痛みや腫れが2,3日でひかない場合は,整形外科専門医の受診が必要です.
骨折治療の原則は①整復②固定③リハビリテーションです.治療計画の段階から機能回復への対応がなされ,骨癒合の進行と併行してリハビリを進めることが,スポーツ復帰を早めます.
骨折・脱臼の診断
整形外科ではレントゲンやMRI検査で確定診断を行います.近年ではMRIの普及により,レントゲンではわからなかった,骨挫傷(骨の打撲)や疲労骨折も診断が可能で,受傷機転の解明や再発防止にも役立っています.
骨折・脱臼のリハビリテーション
リハビリテーションの目標は①筋萎縮の予防,筋力の維持②関節拘縮の予防,関節機能の維持③やむなく生じた筋萎縮,筋力低下,関節拘縮は最小限に抑え,改善に努力④骨折前の機能状態への早期回復です.
骨折や脱臼から回復する時間を早くすることはできませんが,少しでも早く,少しでも障害が残らないように,スポーツドクターがスポーツ復帰を支援します.
肉離れ
肉離れとは、筋肉が部分的に断裂することで起こるスポーツ外傷の一種です。肉離れは、筋肉が収縮している時に逆方向に引き伸ばされるような力がかかると発生しやすく、下半身の筋肉に多く見られます。肉離れが起こると、患部に激しい痛みが生じ、歩行や走行などの動作が困難になります。また、患部にへこみや変色が見られることもあります。
肉離れの重症度は、MRIなどの画像検査で判定されます。一般的には、奥脇の分類というMRIに基づく分類法が用いられます。奥脇の分類では、肉離れは以下の3つのタイプに分けられます。
– Ⅰ型:筋腱移行部の血管(筋組織)損傷のみであり、腱膜は損傷していないもの。
– Ⅱ型:筋腱移行部(特に腱膜)に損傷がおよぶもの。
– Ⅲ型:筋腱移行部から筋線維まで断裂しているもの。
奥脇の分類では、Ⅰ型は1〜2週、Ⅱ型は1〜3ヶ月(平均6週)、Ⅲ型は手術による修復を検討するというスポーツ復帰時期の目安が示されています。しかし、これらはあくまで目安であり、個人差や治療法などによって変わることがあります。また、同じタイプ内でも、スポーツ復帰を遅らせるマイナス因子が存在します。例えば、Ⅰ型では高信号領域(出血や血腫)の大きさ、Ⅱ型では腱膜の途絶部の長さがマイナス因子となります。
肉離れからスポーツ復帰するためには、適切な治療とリハビリテーションが必要です。治療では、まず受傷直後にRICE処置(安静・冷却・圧迫・挙上)を行い、損傷部位を安静に保ちます。その後、消炎鎮痛剤や湿布などを用いて痛みや炎症を抑えます。重度の場合や合併症がある場合は手術を行うこともあります。リハビリテーションでは、損傷した筋肉の柔軟性や強度を回復させるためにストレッチや筋力トレーニングを行います。また、再発を防ぐために姿勢や動作の改善や予防体操も行います。
腱断裂
腱断裂のスポーツ復帰時期について
腱断裂はスポーツ選手にとって重大な怪我の一つです。腱は筋肉と骨をつなぐ組織で、過度な負荷や衝撃によって切れてしまうことがあります。腱断裂の部位によっては、手術が必要な場合もあります。腱断裂の治療法は、安静やリハビリテーション、手術など様々ですが、いずれの場合も完全に回復するまでには時間がかかります。では、腱断裂のスポーツ復帰時期はどのように決めるべきでしょうか。
腱断裂のスポーツ復帰時期は、個人差や部位差が大きいため、一概に言えません。しかし、一般的な目安としては、以下のような基準があります。
- 痛みや腫れがなくなり、関節の可動域が正常に戻ったこと。
- 筋力や柔軟性が元のレベルに戻ったこと。
- スポーツに必要な動作を痛みなく行えること。
- 医師や理学療法士から復帰の許可を得たこと。
これらの基準を満たしていても、スポーツ復帰後は無理をしないように注意する必要があります。腱断裂の再発や合併症を防ぐためには、徐々に強度や時間を増やしていくことが大切です。また、ウォーミングアップやストレッチングをしっかり行い、腱に適度な負荷をかけることも重要です。
腱断裂はスポーツ選手にとって厳しい試練ですが、正しい治療とリハビリテーションを行えば、復帰は可能です。自分の体の状態をよく把握し、医師や理学療法士と相談しながら、安全で効果的なスポーツ復帰を目指しましょう。