スポーツ外傷(打撲・捻挫)の初期治療

日経新聞に取材記事

スポーツ外傷とは、スポーツ活動中に身体に急激な大きな力が加わって起こる不慮のケガのことです。打撲や捻挫などのスポーツ外傷に対する初期治療として、RICE処置という方法があります。RICE処置とは、Rest(安静)、Ice(冷やす)、Compression(圧迫)、Elevation(上げる)の4つのステップからなる応急処置のことです 。RICE処置を早期に行うことで、内出血や腫れ、痛みを抑え、回復を助ける効果があります。

RICE

RICE処置の具体的な方法は以下の通りです 。

Rest(安静)

受傷後は安静にすることが大切です.シーネ(副木)やテーピング,三角巾や弾性包帯,ギプス固定などで患部を固定し、安静にすることで,損傷を拡大させないことと,組織の修復を阻害しないことが大切です.

Ice(アイシング・冷却)

患部を冷やすことで痛覚を麻痺させて痛みを減少させることができます.アイシングによって血管が収縮することにより,局所の腫れや炎症を抑え,炎症の拡大を防ぎます.
細胞レベルでは,組織を修復しようとして発熱しているので,アイシングするで,車のエンジンが熱くなってダレル(馬力が落ちる)のを冷却水で冷やして熱効率をあげるのと同じく,余分な酸素消費を減らし,効率的に組織修復を促し,浮腫を抑制する効果が得られると考えられます.
すぐに湿布を貼って冷やしたと言う患者さんがいらっしゃいますが,湿布の成分によっては皮膚の刺激で,血管が拡張し,逆効果となることがありますので,アイスパックなどで冷やすことが勧められます.
また,皮膚感覚が麻痺するので凍傷にも注意が必要です.

Compression(圧迫)

患部に適度な圧迫を患部に与えることで腫れ(組織の浮腫)や炎症をコントロールすることができます.スポンジやテーピングパッドなどを腫れが予想される部位にあて、テーピングや弾性包帯で軽く圧迫気味に固定します。患部の内出血や腫れを防ぐことが目的です。きつく圧迫しすぎると血流障害や神経障害を起こす可能性があるので注意します。

Elevation(挙上)

患部を心臓より高い位置に挙上をすることで,静脈還流を促進し,炎症物質を局所から取り去り,内出血による腫れを最小限に抑えることができます.常に挙上することが無理でも, 痛くなってきたら少しの間でも患部を持ち上げてみてください.患部を心臓より高くあげるようにします。座布団やクッションなどを使って患部を高く保ちます。

RICE処置はあくまでも応急処置であり、治療ではありません。処置後はすみやかに医療機関を受診しましょう。

捻挫の初期治療 テーピング

上記のRICE処置に加え,軽度の捻挫ではテーピングが有効なことが多く認められます.
捻挫とは、関節を支える靭帯が過度に伸びたり切れたりする外傷です。足首の捻挫は、スポーツや日常生活でよく起こるケガの一つです。足首の捻挫をした場合、初期治療としてテーピングを行うことがあります。テーピングとは、粘着テープや伸縮性テープを患部に貼ったり巻いたりすることで、関節の動きを制限したり圧迫したりする方法です。テーピングの目的は、以下のようなものがあります。

  • 痛みや腫れを和らげる
  • 靭帯の治癒を促す
  • 再発や合併症を防ぐ
  • 運動機能を維持する

テーピングを行う際には、以下の点に注意しましょう。

  • テーピングは一時的な処置であり、必要に応じて医師の診察やレントゲン検査を受けることが重要です。
  • テーピングは適切な方法で行わなければ効果がないばかりか、循環障害や神経障害などの副作用を引き起こす可能性があります。
  • テーピングは1日に1回程度は外して血流を促し、皮膚の状態を確認しましょう。また、テーピングを外すときはゆっくりと剥がすようにしましょう。

テーピングの巻き方は、患部の状態や目的によって異なりますが、一般的には「8の字テーピング」と呼ばれる方法がよく用いられます。この方法では、足首の内側から外側に向かって8の字状にテープを巻きます。これにより、足首の内反動作(足首が内側に曲がる動作)を制限し、靭帯への負担を減らします。