体外衝撃波治療のメカニズム

体外衝撃波治療のメカニズムはとてもユニークで、整形外科領域では理論と実践の両面で高く評価されています。以下に、「破壊」と「再生」という二つの観点から体外衝撃波治療のメカニズムをわかりやすく解説します。

🔊破壊

衝撃波は、高エネルギー・高振幅の音波(圧力波)で、空気や組織内を非常に短時間で急激に伝播します。一般には圧力の急激な上昇と下降を伴う「機械的刺激」で、医療用の衝撃波照射装置では、照射部位に数千回/秒のミクロ振動と圧力変動を与え、組織に微細な損傷を引き起こします。この損傷はマイクロトラウマと呼ばれ、主に以下の現象を引き起こします:

🧫 マイクロトラウマ(微細損傷)の誘導
あえて軽微な損傷を起こすことで、体内が「修復モード」に入る。すなわち炎症反応 → 修復細胞の動員 → 組織再構築の過程を経て、治癒をめざすものです。

  • 末梢神経終末組織の破壊: 衝撃波は硬い組織にダメージを与えるので骨や腱などの末梢神経終末を破壊します。照射直後から痛みの軽減を実感できます。長期罹患例では一回の治療ですべて破壊することはむつかしいのと再生もするので数回にわけての治療が必要になります。
  • 神経終末の刺激遮断: 痛みを伝えるC線維などの神経に衝撃波が作用し、一時的に痛覚を鈍化させる。
  • 炎症反応を緩和: 炎症や痛みを伝える神経ペプチド(Substance P)減少により、中枢・末梢ともに痛みを軽減する効果を発揮。
  • 石灰沈着物の破砕: 肩関節(腱板)や股関節に見られる石灰沈着部位を物理的に破壊し、衝撃波が石灰沈着部に物理的破砕圧を与え、その後マクロファージ(貪食細胞)がこれらを吸収。
  • 組織の刺激: 衝撃波の機械的作用が腱や筋肉、靭帯の細胞に微細な振動を与え、新たな治療プロセスを開始させます。

🔬 再生

体外衝撃波が組織に作用すると、複数の生理的プロセスが引き起こされます。衝撃波による微細損傷の結果として修復機構が動員され、「組織再生」や「細胞の活性化」が促されます:

  • 血管新生: VEGF(血管内皮成長因子)、eNOS(一酸化窒素合成酵素)などの成長因子が活性化し、分泌されることで、血管新生(angiogenesis)が起こり、患部への血流が増加。
  • 幹細胞の動員: 衝撃波の刺激が腱、靭帯、骨などを修復する幹細胞(特に腱や骨の前駆細胞)が刺激され、患部に集まることで、腱・靭帯・骨組織の再生が促進される可能性

「破壊」は治療の起点であり、「再生」はその結果を受けて回復を促すプロセス。これらの双方が組み合わさることで、体外衝撃波治療が優れた治療結果をもたらしているのです。

🧠 メカニズムの全体像

メカニズム対象効果
機械的刺激組織・石灰物質微細破砕、損傷誘導による修復開始
生理的活性化血管・成長因子血流改善、再生促進、抗炎症反応
神経作用痛覚神経鎮痛、炎症性ペプチドの抑制

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