変形性膝関節症の再生医療

変形性膝関節症(膝OA)は、関節軟骨の摩耗による痛みや腫れを特徴とする病気で、高齢者によく見られます。その治療として、PRP(多血小板血漿)療法が注目されています。

PRP療法は、患者自身の血液から採取した多血小板血漿を用いて行う再生医療です。血小板に含まれる成長因子が軟骨の修復を促し、炎症を抑える効果もあります。この治療法は、保存的療法(湿布やヒアルロン酸注射)では効果が不十分だが、手術をまだ考えていない患者に適しています。

メリット:

  • 自己血液を使用するため副作用が少ない。
  • 痛みの緩和や軟骨修復が期待できる。
  • 短時間の日帰り治療が可能。

デメリット:

  • 保険適用外のため費用が高額(例:PRP療法10万円前後、APS療法30万円前後)。
  • 効果には個人差があり、症状が進行している場合は効果が限定的。

PRP療法をヒアルロン酸(HA)注射との比較研究で有効率に差はあるのか

PRP療法(多血小板血漿)とヒアルロン酸(HA)注射を比較した研究によると、特に軽度から中等度の変形性膝関節症(OA)患者において、PRP療法は以下の点で有効性が高いことが示されています[2][3][4]:

  • 痛みの軽減: PRPは炎症を抑える特性を持ち、痛みの改善効果がヒアルロン酸よりも持続することが報告されています。
  • 関節機能の改善: PRPの方が関節機能の改善においても優れているという結果が多くの研究で確認されています。
  • 効果の持続性: PRPは、効果が6~12か月以上持続する場合があり、ヒアルロン酸注射の数週間~数か月の効果持続期間に比べると長い傾向にあります。

一方で、PRP療法は自費診療で高額なケースが多い(1回あたり約50,000~100,000円程度)ため、治療コストを考慮する必要があります。また、重度のOAでは、ヒアルロン酸とPRPの差が縮まることがあり、症例によって効果は異なる場合があります。

これらの点から、特に軽度~中等度のOA患者においてはPRP療法が優れた選択肢として評価されています。

次世代PRPと言われるAPS療法は優れているのか

APS療法(Autologous Protein Solution)は、PRP療法をさらに進化させた次世代型治療として注目されています。以下のような点で優れた特徴を持っています:

  • 炎症の抑制: APSは特に抗炎症性タンパク質を高濃度に濃縮して抽出するため、関節炎症の改善に特化しています。
  • 痛みの軽減: 患部に注射することで痛みを緩和する効果があり、一部の臨床データではその効果が約24か月間続くケースが報告されています。
  • 再生能力: 成長因子も豊富に含まれており、関節内環境を整えつつ組織修復を促進する可能性があります。
  • 治療の持続性: 従来の保存療法やPRPよりも長期間持続する効果が期待されます。
  • 適応対象: 特に変形性膝関節症に特化しており、重度の症状や手術を避けたい患者にとって良い選択肢。

ただし、APS療法は自由診療であり、1回の治療が高額(約30万円程度)であるため、費用面や効果に個人差があることに注意が必要です。

APS療法とPRP療法の違い

APS療法(Autologous Protein Solution)とPRP療法(多血小板血漿療法)の主な違いは、治療の焦点と加工の方法にあります:

  1. 抽出方法と成分:
    • PRP療法では血小板を多く含む血漿を抽出し、組織修復を促進する成長因子を利用します。
    • APS療法はさらに進んだ手法で、PRPを加工して抗炎症タンパク質や特定の成長因子を高濃度に抽出します。これにより、炎症の抑制に特化しています。
  2. 期待される効果:
    • PRPは関節や腱の修復を目的とし、組織の自然治癒を高めます。
    • APSは、特に変形性膝関節症のような炎症性疾患の痛み軽減と炎症抑制に効果的です。
  3. 適応症状:
    • PRPは幅広い用途があり、関節・腱・靱帯損傷の治療に用いられます。
    • APSは、主に膝関節症のような関節の慢性痛や炎症に特化しています。

各種治療の有効率、治療効果について

軽度から中等度の変形性膝関節症(OA)患者では

  • ヒアルロン酸(HA)注射 有効率40%
  • ステロイド(ケナコルト)注射 有効率70%
  • PRP療法 60-70%
  • APS療法 65%

との報告があり、標準的治療のヒアルロン酸注射よりは有効といえますが、自費治療となることを考えると費用対効果の面を考慮される方も少なくないと思います。さらに、変形が強度の進行した変形性関節症ではAPSやPRP療法の効果が低い傾向があります。