現在、日本の医療現場では麻酔薬の供給不足が深刻な問題となっています。特に局所麻酔薬「アナペイン」の不足が顕著で、出産やがん治療など幅広い分野に影響を及ぼしています。
当院、稲毛整形外科でも麻酔薬キシロカインを1年前から薬卸業者の岩淵薬品様に発注を頻繁にかけていますが、昔から付き合いのあるプロパーに半年で一箱(10バイアル、10人分)分けていただいて以来、まったく入荷なく、ブロック治療やケガの縫合を行うには程遠い状況です。
したがって、経口鎮痛剤や座薬で対応できる不要不急の患者様には、いわゆる痛み止めの局所注射やトリガーポイント注射などを控えさせていただいております。大きな切り傷で局所麻酔を必要とする方のために数本を確保していますが、麻酔薬を大量に必要とする重症例は大きな病院へ紹介させていただいている状況です。ご理解のほどよろしくお願いいたします。
主な原因
- 製造拠点の移転による不具合:海外から国内への製造移管中にトラブルが発生し、出荷が制限されました。
- 薬価の低さ:一部の麻酔薬は価格が非常に安く、製薬会社が採算を取れず製造を継続できない状況に。
当院で使っているキシロカイン注ポリアンプ 1%10mL管は79円です。私見ですが作れば作るほど赤字が膨らむのでメーカーは正義感のみで頑張って作ってくれていたのだと思います。医科も歯科も麻酔薬がなければすべての痛い処置ができないといっても過言ではありません。 - 供給の一極集中:特定企業に依存していたため、製造停止が全国に波及。
医療現場での対応
- 代替薬の使用:ポプスカインやキシロカインなどで対応していますが、これらも供給が不安定。
- 使用量の最適化:1本の麻酔薬を複数人で分割使用するなど、無駄を減らす工夫。
- 優先順位の設定:無痛分娩や帝王切開など、麻酔が不可欠な症例を優先。
影響を受けている分野
分野 | 影響内容 |
---|---|
産婦人科 | 無痛分娩の制限、患者の不安増加 |
がん治療 | 手術延期の可能性、代替薬の確保に苦慮 |
歯科治療 | 抜歯などで麻酔の持続時間が短くなる |
今後の見通し
- 製造会社は新たな製造所の承認を取得済みで、初回出荷に向けて調整中。
- 厚労省も供給体制の見直しや後発薬の承認に向けた対応を進めています。
この問題は医療従事者だけでなく、患者やその家族にも大きく関わる重要な課題です。必要な治療が安全に受けられるよう、早期の安定供給が望まれています。