脊髄神経腫瘍(馬尾腫瘍)|ただの腰痛ではない

2012年始めの診療日記になります. 本年もよろしくお願いいたします.

 右の写真は腰のMRI側面像(画面右側が背中側)です.当ブログを見ていただいている方には説明するまでもなく,黄矢印のところ,第2腰椎椎体後方(正確には脊柱管内)に白い塊のようにみえるのは脊髄神経鞘腫などの馬尾腫瘍です.

 MRIを撮れば一目瞭然ですが,MRI検査にいたるまでが問題です.

この患者さんの症状は,腰痛だけで,足のシビレもなく,いつもの腰痛と思って当院に来院されました.触診すると腰の付け根ではなく腰の上のほう,背中に近い部分に圧痛がありました.

患者さん本人からみればいつもの腰痛,ただの腰痛でも,毎日多くの患者さんを診ている整形外科医的には,多くの人がわずらう下位腰椎のヘルニアやぎっくり腰とは違う腰痛でしたので,MRI検査を受けるよう説明させていただきました.

当院ではMRIがあるので比較的患者さんも気軽にMRI検査を受けていただけますが,通常は他施設に検査を依頼して,再度画像を持ってきてもらって診断ということになるので,MRI検査を受けてもらうことが少なくなります.

リハビリをやってもなかなか治らない.でも休みをとって大病院にいくほどでもないけど,やっと重い腰を上げてMRI検査を受けたら馬尾腫瘍だったという典型的なブログをみつけました.馬尾神経腫瘍入院日記 – Yahoo!ブログ,ご参考まで.

この患者さんの場合も,日々目にする腰痛ではなかったのですが,馬尾腫瘍の確信があって検査を受けてもらったわけではありません.ただの腰痛と思っていても,かかりつけのドクターが検査を受けたほうがいいといわれたら,多少面倒でも受けていただくことが必要だと思います.

仙腸関節炎|あぐらがかけない

若い女性ダンサーが腰痛で来院.

 腰痛といってもさまざまでこの患者さんの場合は骨盤と背骨をつなぐ,仙腸関節という部分に圧痛(押すと痛い部分)がある.

下肢伸転挙上テストをしながら, ”からだは柔らかいんですね” などと話しながら股関節をみると開排制限(股をひらくことができない)がある. “あぐらがかけないことに最近気がついたんです”

半年前,股関節をやわらかくするために整体に行って骨盤矯正をしたら,激痛で歩けなくなったので,自分でストレッチをしていたとのこと.

ストレッチぐらいで仙腸関節がずれることはまずないのだが,この患者さんの場合,全身の関節弛緩性があり,すべての関節がゆるい.

股関節だけは,普通のノートパソコンが180度開かないのと同じく,大腿骨頭がすっぽりと骨盤側の臼蓋にはまっているため,骨のつくりの問題でいくらストレッチをしてもある程度以上は開くことはなく,かわりに仙腸関節がゆるくなってしまったのだと考えられます.

個々の患者さんでどこまで開くかは股関節の形状で異なりますが,手の親指が前腕に触るまで曲げられる方は要注意です.

距骨下関節不安定症|ランニング中のオーバープロネーション

 足くびの捻挫の後遺症として距骨下関節不安定症なるものがありますが,これは距骨と踵骨をつないでいる距踵靭帯がのびて骨同士のつながりがゆるくなってしまったことにより起こります.

 でこぼこの道を歩くと痛くなる場合,足関節だけでなく足関節のもう一つ下にある距骨下関節の障害も考える必要があります.

着地時に踵が内側に大きく倒れこむオーバープロネーションのランナーは捻挫していなくともこの部位がやられている場合があります(黄矢印).

直接的にはテーピングで押さえ込むのですが根治療法ではなく,リハビリによりアキレス腱や前後脛骨筋,屈筋支帯周辺の筋緊張をとることで劇的に改善することがあります.