バイオハザード

 新型インフルエンザA(H1N1)ウイルスは,国立感染症研究所の病原体等安全管理規定によりバイオハザードレベル3(人に感染すると重篤な疾患を起こすが、他の個体への伝播の可能性は低いもの)に分類されている.

 ヒト-ヒト感染が容易に起こるように突然変異し,エボラ出血熱や天然痘と同じレベル4まではいかなくとも,バイオハザードレベルは3.5(規定には中間はないが)と警戒ラインに達している.

 ウイルスは,細菌と同じものと思っている方も多いと思うが,そもそも,ウイルスは生物ではなく,単体では増殖することはない,ただのたんぱく質である.ただ,核酸(遺伝物質であるDNAまたはRNA)と転写酵素(RNAウイルスは逆転写酵素)を構造に持っており,ヒトやトリ,ブタ等の細胞内に入ることで,自己増殖することができる.

 ウイルスの起源については,諸説紛々としているが,ウイルスが進化して生命が誕生したという生命起源説.細胞個々の役割分担を果たしている統合体としての生物から,勝手に活動を始めた分離独立説もある.後者であれば,ウイルスというものは,全く自己中心的な存在(よく言えば柔軟的,血液型ではB型)といえるが,これぞ種を維持するための生命の根源といえる.

 バイオハザードというと,映画やゲームを思い浮かべてしまうが,今まさに,現実の世界で,パンデミック直前.用心するに越したことはない.今回は毒性の低いブタ由来の新型インフルエンザということだが,トリ新型インフルエンザによるバイオハザードが現実とならないことを願いたい.

頚椎脊柱管狭窄症による頚椎症性脊髄症|セカンドオピニオン 頚椎手術

 頚椎症性脊髄症の初発症状は手指のしびれ64%,歩行障害16%といわれており,必ずしも頚部痛や肩こりが伴うものではない.

先日来院された患者さんは1ヶ月前からの足のふらつきで発症.すでに千葉の病院で正確な診断を受け,手術を勧められている.

 この患者さんは気がついていなかったが,頚椎症性脊髄症による膀胱直腸障害(頻尿,便秘)や下肢腱反射亢進もみられ,高度な機能障害例や進行例には早期の手術療法が勧められています.まだ早いかなと思うぐらいの方が手術成績はいいのです,

 たいした症状でもないのに,いきなり手術といわれ,戸惑う気持ちも十分わかります.最初の先生が信じられないのではなく,おそらく自分の病気が信じられないのだと思います.もう一件,都内の有名病院を予約しているとの事,同じ事を言われたら,最初から経過を診られている主治医の先生を信頼して治療されるよう,勧めさせていただいた.

PS 頚や腰のヘルニアでも尿が出なくなったら,24時間以内(可及的早期)に,神経の圧迫を取り除く処置(除圧手術等)が必要です.

肩関節関節唇損傷や腱板損傷

 新学期を迎え,この1週間,非常に気になっていることがあります.

 中学生になって,硬式野球クラブチームに転向した野球少年が野球肩や腰痛で受診することの多いこと,多いこと.WBCの2連覇という,歴史的快挙に触発されたのか,実際にどのくらいの新中学生が,硬式野球に転向したのかわかりませんが,今年はとみに多く見られます.

 中学校の3年間は成長期で,本当に身長が伸びます.中学生になって,成長ホルモンの分泌も活発になり,骨も伸びる準備をはじめて,骨の成長軟骨がやわらかくなっています,冬が終わり,春の到来とともに,雪解け水で地面が柔らかくなり,植物が芽を出そうとしているのと同じ状態です.

 そのような時期に,今まで慣れ親しんだ軟式ボールから,重くて硬い,硬式ボールや,硬式のバットに変えてしまうとどうなるか?一部の生徒は適応できますが,筋力もない,骨も柔らかい,新入生は壊れてしまうことでしょう.肩関節の関節唇損傷や腱板損傷を起こす前に,骨が悲鳴をあげて,上腕骨の疲労骨折や,骨端線離開(骨折の一種)を起こしてしまいます.

 早くから,硬式野球に変更させるメリットも否定はできませんが,高校生になってから硬式野球に転向しても,半年で追いつけるという意見も見られます.学校のクラブ活動には所属せず,クラブチームで硬式野球をさせるのが,はたして良いのか難しい所です.子供の成長を楽しみながら,でも,無理をさせずに,暖かく見守ってあげる事も大切かと思います.

中足骨疲労骨折?モートン病?|足の甲の痛み

疲労骨折 この1ヶ月,職場を変わり,歩きすぎて足の甲が痛くなり,なかなか痛みが取れないので来院.健康保険に入っておらず,自費では初診とレントゲンだけでも5千円を超えてしまうので,触診で,モートン病と考えたものの,圧痛と腫れが気になり,レントゲンを撮らせていただいた.


 漫然と見ていれば何も見えないが,モニター画像を拡大すると,第2中足骨の母趾側の皮質骨がホンワリとぼけており,疲労骨折だった.

疲労骨折拡大 モートン病は中年の女性に多く,確率的には,Freshmanにはまず認められない.治療方法もモートン病と疲労骨折では全く異なります.

 

膝の水を抜くとくせになる?|膝関節水腫

どこの誰が言い出したのか?

膝の水を抜くとくせになる?

診察でも,患者さんによく聞かれます.
答えは,Yesでもあり,Noでもあります.

膝のスポーツ外傷で半月板や靭帯を損傷した際にたまった水(関節液)は,膝に水がたまる原因(膝軟骨損傷や,膝靭帯損傷,膝半月板損傷)が軽度であれば,受傷後早期に抜いてあげると,膝の可動域(曲がり)が保たれ,その後のリハビリが早く,早期スポーツ復帰が可能となります.

しかし,膝に水がたまる原因(膝軟骨損傷や,膝靭帯損傷,膝半月板損傷)が治らないまま無理な運動をすると,漫性滑膜炎をおこし,再度水がたまり,水を抜いたら動けるようになり,膝に水がたまり,また水を抜く.という悪循環におちいります.

1週間前,スポーツで膝を捻挫して膝に水がたまって,膝が曲がらなくなった学生

前十字靭帯損傷 初診時は1人で来院,強硬に注射を嫌がったので,MRIを予約して,アイシングとテーピング.今日はお母さんと来院され,MRI検査の結果,前十字靭帯不全損傷.

1週間経っても,膝に水がたまった状態で,膝が30度も曲がらない.お母さんにも説得してもらい,半ば強制的に関節穿刺(膝に針を刺してたまった水を抜く処置)! 注射針を刺す間,おなかをつねると痛くないよ.といって,膝の水を抜いたところ,すぐに膝が90度楽に曲がるようになり,本人も喜んでくれました.
膝の水を抜いている間,おなかがつまめないといいながら泣いていましたが,何とか手元だけはぶれずに膝の水を30cc抜くことができました.(正常値は多くても2-3cc)

 
私の腹も,つまめないけど,皆さんは大丈夫?