診察若しくは検案をし、又は出産に立ち会つた医師は、診断書若しくは検案書又は出生証明書若しくは死産証書の交付の求があつた場合には、正当の事由がなければ、これを拒んではならない。
●代理人からの診断書等の要求には下記刑法に基づき,患者本人または遺族の同意書が必要です.
刑法 第134条(守秘義務違反)
第1項 「医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産師、弁護士、弁護人、公証人又はこれらの職にあった者が、正当な理由がないのに、その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときは、6月以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。」
●医師法第19条の診断書交付拒否の正当事由とは,未診断,癌患者に病名を隠している場合等(説明義務あり)を指します.
●虚偽の文書作成 (故意と過失の区別が問題.患者,遺族等の頼みで行うことは故意あるいは未必の故意に該当)
問われる責任:職責により重さが異なる (公務員は重い)
公文書偽造は刑法第157条の適用→罰則あり
私文書偽造は罰則なし (詐欺や公務所(市役所,警察など)に提出するものは別:刑法第160条)
死亡診断書 (死体検案書) は公務所に提出する私文書.
診断書の記載内容
医師の診断書については上記のように,いろいろな制約がある中で,正当な事由がなければ,これを拒んではならない.とされていますが,内容についてまでは言及されていません.
拒むべき理由まではないものの,医学的根拠がなければ,患者さんの希望どおりの診断書を書くことはできませんし,まして,因果関係がはっきりしない事象にまで言及することはできません,
例えば,診察で眼が腫れていたので,眼外傷により全治1週間を要するとは書けますが,何月何日の夫婦喧嘩で眼が腫れたとは,書けません.受傷後,早期の受診であれば,何日前の受傷であるかは推定できますが,打撲の原因は平手打ちの手形でも残っていない限りわかりません.
もちろん,何度もDVで受診されている方は,DVで受傷したという蓋然性(あってしかるべき事)があり,一医院のカルテ(私文書)といえど,司法の場では,個人の日記以上の証拠として認められると考えられます.
交通事故(人身事故)では,現在の症状に対する医学的根拠に基いて,警察に診断書を出さなくてはいけません.
何ヶ月も前の事故に対する診断書を書いてくれと頼まれることがありますが,その数カ月の間に,酔っ払って転んだかもしれないし,事故と現在の症状の因果関係を証明する何物もありません.
できれば,仕事が忙しくても受傷後,なるべく早く,受診していただきたいと思います.