顔面外傷・顔面骨骨折
スポーツや交通事故による顔面外傷で顔面骨を骨折した場合の対処方法と受診科をご案内しています.
受傷直後,腫れる前から,触診でわかるほどの変形がある場合は,骨折の可能性があります.顔面の単純X線、CT検査で骨折部位や骨折の程度を確認し,早期の手術や整復が必要な場合があり,当日中の受診が必須です.
特に下記の顔面骨骨折は後遺症を残したり,早期の整復が必要な骨折です.専門科でも対応できない医療機関がありますので,明らかな顔面の変形など,骨折が疑われる場合は,あらかじめ電話等でご相談されることをお勧めします.
眼窩底骨折(吹き抜け骨折)
眼球をおさめている眼窩は,眼球破裂を防ぐためか,底にあたる部分(上顎洞との隔壁)が非常に薄い骨でできています.
眼に急激な外力が加わり、眼窩内圧が上がると薄い骨が折れ,眼を動かす筋肉や顔面神経が挟まれます.
上のほうが見にくくなったり,頬がしびれるなどの症状のある場合は耳鼻科で整復手術が必要なことがあります.視野欠損を伴う場合は,眼科も受診してください.
鼻骨骨折
鼻に外力が加わった場合は鼻骨が骨折します.鼻が一方へ曲がったり、鼻が陥没するといった外鼻の変形が起こります。
鼻骨骨折は受傷直後ならば目視で正しい位置に整復することが可能ですが,受傷翌日からは鼻根部の腫れがひどくなるため、鼻骨が元の位置に整復できたかどうか確認するのが難しくなります(レントゲンで0.1mm単位のずれを修正するのは困難で,人間の目が一番です).
その場合は受傷後1週間ほど腫れが引くのを待って,整復しますが,3週間ほどで骨癒合(骨がくっつく)するので,それ以上経過すると元に戻しにくくなります.
転位のない場合は整形外科で対応できますが,整復の必要な場合は鼻出血に対する処置が必要なので,受傷早期に耳鼻科を受診する必要があります.
頬骨骨折
頬骨(ほお骨)は目の下側にある骨で,細いところ(頬骨弓)では割り箸ほどの太さなので,意外に簡単に折れてしまいます.
頬骨には咬筋や側頭筋という筋肉が下顎からこめかみまで通っているので,頬骨弓が陥没すると顎が動かしにくくなったり,顔面や眼球が陥没したように見えたりします.
転位の少ないものは整形外科でも経過観察しますが,上記症状のある場合は,歯科口腔外科や形成外科,頭頚部科などに紹介します.
下顎骨折
下顎骨折は下あごの骨の骨折で,骨がずれると,口があけにくくなったり、噛み合わせ(咬合)がずれたりします.
下顎骨骨折では,ずれ(転位)が軽度の場合は、上下の歯の隙間にワイヤーを通し,正しい咬合位で固定(顎間固定)します.
ずれが大きい場合は骨折部をプレートで固定した後、顎間固定をします.
歯牙の損傷を伴っていたり,咬合不全や顎関節症が後々大きな問題になったりすることが多く,整形外科や形成外科でも歯科口腔外科の専門知識が必要です.