靭帯損傷

靭帯損傷

膝前十字靭帯損傷

 スポーツ外傷における靭帯損傷は頻繁にみられます.
 靭帯損傷は,骨折,脱臼,肉離れなどと比べると,直感的に理解しにくく,治療法もさまざまで,完治するのか,放置したときにどういう障害が残るのか,簡単ですが,総論として記載しておきます.
 

靭帯損傷の症状

 靭帯損傷は重度の捻挫(3度)と解釈すると判り易いと思います.
 捻挫したときに関節から異常な音が聞こえたり,受傷直後から関節が腫れてくれば靭帯損傷を疑う必要があります.
 靭帯には知覚神経があるわけではないので,周囲の組織が修復すると,痛みはなくなりますが,靭帯が切れていると運動時,抜ける感じや力が入らないなどの運動機能障害がずっと続きます.
 

靭帯損傷の原因と病態

 靭帯と腱の大きな違いは,腱は筋肉の両端を骨につなぐ組織であるのに対し,靭帯は骨と骨をつないでいる,硬いひものような組織で,肉眼的にはのび縮みしません.
 動くべきところには筋肉と腱があり,関節が動いてはいけない方向には靭帯があり,関節を制動したり,回旋運動の軸を作ったりしています.
 関節が動いてはいけない方向に強い力が加わると,靭帯の線維は断裂します.部分断裂では伸びたように見えますが,線維自体はいろいろな場所で断裂し,全体として伸びたように見えるだけで,ゴムの様にすぐに縮むことはありません.
 

靭帯損傷の診断と治療

 靭帯損傷の診断は受傷時の問診と関節不安定性の徒手検査である程度の重傷度が判断できます.レントゲン検査は骨折を除外診断するのに必須ですが,整形外科専門医以外で,骨は大丈夫,捻挫でしょうなどといわれ,初期治療の機会を逃している患者さんも数多く見受けられます.
 患者さんも骨折がないと安心してしまうようですが,骨折よりも治療の難しい靭帯損傷の正確な診断は整形外科専門医を受診してMRI検査などを受ける必要があります.

膝前十字靭帯損傷に対する前十字靭帯再建術

 靭帯損傷の治療は各論に譲りますが,靭帯組織の修復,再生,靭帯再建など靭帯に関する研究は,スポーツ整形外科の基礎研究では大きな分野となっており,多くの研究者,医師が靭帯再生,靭帯再建に取り組んでいます.
 私の研究テーマであり,学位論文となった”再建前十字靭帯の組織学的,力学的検討”では,前十字靭帯再建術で作った前十字靭帯が,どんな構造をしているのか,どのぐらいの強度があり,どのぐらいの期間で正常の靭帯と同じになるのかについて検討しました.英文ですが,膝関節前十字靭帯再建術の基礎研究の論文中の写真を見てみてください.