大腿骨頭すべり症|こどもの股関節痛

大腿骨頭すべり症
ちょっと太めの小学校5,6年生の男の子が太ももや股の付け根の痛みで 受診した場合は,常にこの病気を念頭に置いて診察しています.

成長期の骨といえど,どこでも骨が伸びるわけではなく,主に骨の両端から少し奥まった部分,骨幹端という成長軟骨で細胞分裂を繰り返し,全長を伸ばしていきます.レントゲンでは成長軟骨はうつらないので,この部分が骨端線と呼ばれる黒い線でみることができます.(右図黄矢印)

成長軟骨は周辺の骨に比べて脆弱なため,股関節においては重力に耐え切れず,地滑りのように,大腿骨頭が下にずれていきます.この状態を大腿骨頭すべり症と呼び,完治は難しく,早期発見,できれば発症前の予防が重要です.

この子の場合も,大腿骨頭すべり症を念頭に置きながら運動制限で経過を見ていましたが,骨頭がすべり始めたので,手術治療となってしまいました.すべっていくのかいかないのかは,安静度に加え,成長ホルモンの関与もあり,難しいのですが,太ももや股の付け根の痛みが続くようであれば,整形外科で定期的にレントゲン検査で経過観察する必要があります.

追記:隕石が原発に落ちる確率よりは,確実に高いので,こどもの股関節痛については整形外科医の指示に従っていただきたいと思います.

 

 

スポーツドクターブログ移転のおしらせ

 容量拡大により自サイトe-seikei.comでのブログ運用が可能となりましたので、スポーツドクターブログは稲毛整形外科診療日記へ統合させていただきます。

過去記事も稲毛整形外科ナビページ診療日記検索からご覧いただけるようにいたします。

ひきつづき診療日記をよろしくお願いいたします。

再生医療|iPS細胞

今月はノーベル医学・生理学賞受賞が決定した山中伸弥教授(京都大学)が開発したiPS細胞が話題となりました。

 万能細胞と呼ばれるiPS細胞ですが、心臓の筋肉にそのまま注射しただけで心筋になるわけではありません。近い将来、心筋になるように方向づけしてから(心筋遺伝子を発現させてから)注射すれば、心筋症や心筋梗塞で壊死に陥った心筋を回復させることができることができるかもしれません。

しかし、障壁はそれだけではありません。注射した細胞が細胞分裂した場合、どこで増殖がとまるのか、わかりません。細胞分裂が止まらず、増殖し続ける状態では癌と同じふるまいをすることも考慮しなくてはなりません。

核分裂を制御して原子力発電が可能になったように(いまだに完全には制御できていませんが)、細胞分裂や癌化を制御する技術が求められています。

遠い将来、人類が細胞の増殖因子と制御因子をコントロールすることができるようになれば、切り傷ややけどが1日で治せる時代が来るかもしれません。

脊髄神経腫瘍(馬尾腫瘍)|ただの腰痛ではない

2012年始めの診療日記になります. 本年もよろしくお願いいたします.

 右の写真は腰のMRI側面像(画面右側が背中側)です.当ブログを見ていただいている方には説明するまでもなく,黄矢印のところ,第2腰椎椎体後方(正確には脊柱管内)に白い塊のようにみえるのは脊髄神経鞘腫などの馬尾腫瘍です.

 MRIを撮れば一目瞭然ですが,MRI検査にいたるまでが問題です.

この患者さんの症状は,腰痛だけで,足のシビレもなく,いつもの腰痛と思って当院に来院されました.触診すると腰の付け根ではなく腰の上のほう,背中に近い部分に圧痛がありました.

患者さん本人からみればいつもの腰痛,ただの腰痛でも,毎日多くの患者さんを診ている整形外科医的には,多くの人がわずらう下位腰椎のヘルニアやぎっくり腰とは違う腰痛でしたので,MRI検査を受けるよう説明させていただきました.

当院ではMRIがあるので比較的患者さんも気軽にMRI検査を受けていただけますが,通常は他施設に検査を依頼して,再度画像を持ってきてもらって診断ということになるので,MRI検査を受けてもらうことが少なくなります.

リハビリをやってもなかなか治らない.でも休みをとって大病院にいくほどでもないけど,やっと重い腰を上げてMRI検査を受けたら馬尾腫瘍だったという典型的なブログをみつけました.馬尾神経腫瘍入院日記 – Yahoo!ブログ,ご参考まで.

この患者さんの場合も,日々目にする腰痛ではなかったのですが,馬尾腫瘍の確信があって検査を受けてもらったわけではありません.ただの腰痛と思っていても,かかりつけのドクターが検査を受けたほうがいいといわれたら,多少面倒でも受けていただくことが必要だと思います.

仙腸関節炎|あぐらがかけない

若い女性ダンサーが腰痛で来院.

 腰痛といってもさまざまでこの患者さんの場合は骨盤と背骨をつなぐ,仙腸関節という部分に圧痛(押すと痛い部分)がある.

下肢伸転挙上テストをしながら, ”からだは柔らかいんですね” などと話しながら股関節をみると開排制限(股をひらくことができない)がある. “あぐらがかけないことに最近気がついたんです”

半年前,股関節をやわらかくするために整体に行って骨盤矯正をしたら,激痛で歩けなくなったので,自分でストレッチをしていたとのこと.

ストレッチぐらいで仙腸関節がずれることはまずないのだが,この患者さんの場合,全身の関節弛緩性があり,すべての関節がゆるい.

股関節だけは,普通のノートパソコンが180度開かないのと同じく,大腿骨頭がすっぽりと骨盤側の臼蓋にはまっているため,骨のつくりの問題でいくらストレッチをしてもある程度以上は開くことはなく,かわりに仙腸関節がゆるくなってしまったのだと考えられます.

個々の患者さんでどこまで開くかは股関節の形状で異なりますが,手の親指が前腕に触るまで曲げられる方は要注意です.